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<エコラの日々>セリ鍋ムーブメントなう

絵・木下亜梨沙

 私が農業を営む名取市下余田地区は、旧河道といわれる地形の湿田地域です。その特性を利用して、約400年前から在来野菜のセリが栽培されています。
 在来野菜とは、栽培者自身が自家採種し、世代を超えて栽培・保存を続けてきた野菜のこと。地域の生活、気候風土に合わせた固有性の高い独自の地元資源であり、おいしい生きた文化財といえます。
 セリ以外にも、宮城県内には加美町の小瀬(こぜ)菜大根や大崎市の伊場野(いばの)芋、仙台市宮城野区岩切の余目(あまるめ)ネギなどの在来作物があります。
 セリは万葉集にも記されている日本古来の食用栽培植物。県内では名取市の下余田・上余田地区の他、石巻市飯野川地区、涌谷町、大崎市松山地区、登米市迫地区で生産されています。
 仙台雑煮や七草がゆなど郷土料理、年中行事に欠かせないセリですが、仙台では根っこを食べる習慣はありませんでした。けれども10年ほど前、農薬や化学肥料を使わず環境を守りながら作った仙台セリを丸ごと味わう食べ方を追求し、仙台で「セリしゃぶしゃぶ」が生まれました。
 以来、インターネットなどで「根っこがおいしい」と評判を呼び、セリ鍋はここ数年で一気に広まりました。テレビの全国放送でも紹介され、需要が本来の生産規模を大きく超えるというブームになっています。
 秋から春先にかけてセリの葉、茎、根の部位ごとの味わいと食感を季節とともに楽しむのがセリ鍋です。セリ農家としては、大消費地の首都圏ではなく、生産地に近い仙台に来ていただき、地元のお店で鮮度の高いセリを味わっていただきたい。だからこそおいしいのだと確信しています。
 「旬に、作られた場所で、地域固有種を食べる」ことに意味があるからです。地産地消に価値があり、輸送や梱包(こんぽう)によって環境負荷をわざわざ高めなくてもいいと考えるからです。
 台所の向こう側で、自分が食べる物をどんな人がどんな土地でどのように作っているか。そんな風景が見える食べ物に出合えることが大切なのだと思います。
 作る人、提供するお店、食べてくれるお客さんの共感と相互関係でじわじわと丁寧に醸してきたもの。それは、いわば「セリ鍋ムーブメント」です。手間と時間をかけて、地元愛が生み出した「仙台の食文化・財産」だと思っています。単なるブームに終わらせたくはありません。
(ACT53仙台・三浦隆弘)


2016年12月19日月曜日


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