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<被災地スポーツの力>高齢者の心身 元気に

被災地の高齢者らを対象にした介護予防の運動教室で、講師に合わせて足踏みする参加者=宮城県七ケ浜町の老人福祉センター

 東日本大震災の被災地で、総合型地域スポーツクラブを運営するNPO法人が、仮設住宅などで不自由な暮らしを続ける高齢者の運動教室を定期的に開催している。心身の健康づくりと地域のコミュニティー形成に一役買う。

<介護予防に汗>
 「いち、に、さん」。指導員の掛け声に合わせ、5人の高齢者が気持ち良さそうに体を曲げ伸ばしした。宮城県七ケ浜町の老人福祉センターで週1回開かれる「元気塾」。地元の「アクアゆめクラブ」が主催する。ボールを使った筋力トレーニングや足踏みなど、体の機能を維持する介護予防の運動で1時間半ほど軽く汗を流す。
 受講する阿部さち子さん(86)は自宅が津波で流され、一時は東京などに避難した。「震災後は畑仕事などができなくなり、体を動かす機会が減った。みんなとしゃべりながら体を動かせるので、心身ともにすっきりする」と喜ぶ。
 2005年設立の同クラブは、震災前からシニア向けの体力向上レッスンを行ってきた。14年からは同町の委託で、被災した高齢者を対象とした無料の運動教室を開始。事業は2年間で終了したため、自主事業として引き継いだ。受講者には送迎付きで月2500円の受講料を払ってもらっている。
 担当者は「幅広い年齢層の住民が運動する機会をつくることは、地域に根ざすクラブの役割」と意義を語る。

<共同体再生も>
 スポーツの楽しさを新天地でのコミュニティー再生に生かす取り組みもある。気仙沼市の「なんでもエンジョイ面瀬クラブ」は、昨年1月に完成した南郷地区災害公営住宅(165戸)の集会所で月1回、ニュースポーツを体験する交流会を開く。ペタンクやカーペット上のカーリング、ユニカールなどを毎回20人前後の高齢者が楽しむ。
 災害公営住宅の完成前は仮設住宅を回って活動していた。クラブマネジャーの小池良光さん(66)は「誰でも簡単に楽しめるのがスポーツの魅力。新たに顔を合わせる住民同士がプレーを通じて会話を弾ませ、仲良くなっているのを実感する」と目を細める。
 市内では、南郷地区を含めて約2100戸の災害公営住宅が建設される予定。「新たなコミュニティーづくりはこれから本番。要望があれば各住宅に出向いて貢献したい」と意気込む。
 被災地の高齢者の健康づくり活動に詳しい仙台大副学長兼健康管理センター長の橋本実教授(スポーツ医学)は「被災地では体育施設の被災や農作業機会の減少などで、高齢者が体を動かす場が減っている」と現状を指摘。「災害公営住宅と周辺集落の住民同士が交流する機会としてスポーツは有用で、続けることが介護予防にもつながる」とクラブの取り組みに期待する。(原口靖志)


2016年12月19日月曜日


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