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地域の味復活誓い幕 仮設商店街閉鎖で閉店

名物の焼きそばを客に出す岩田さん

 東日本大震災で被災した宮城県南三陸町の商店が集まる仮設の「南三陸さんさん商店街」が、今月末に閉鎖される。地域に愛されてきた老舗の飲食店「豊楽食堂」も53年の歴史に幕を下ろす。店主の孫で、2012年2月の商店街オープン時から店を支えた岩田大(ひろし)さん(29)は「料理を勉強し直し、復興した町にまた戻ってくる」と誓う。
 「いらっしゃーい」「お気を付けてー」。トレードマークの赤いタオルを頭に巻き、威勢よく客に声を掛ける。豊楽食堂はラーメンや丼の盛りが良く、昼時には地元住民や工事関係者で混み合う。
 岩田さんは東京都台東区の下町出身。1963年に祖父母が創業した食堂は志津川の中心部にあり、小さい頃から年に2回は訪れた。こぢんまりとした店内には常連客が来て会話を楽しむ。その雰囲気が大好きだった。「いつかこの店を乗っ取ってやるんだ」と幼い心に決意が芽生えた。
 震災当時は料理の腕を上げるため、仙台市の調理師専門学校に通っていた。町に駆け付けると、公立志津川病院に近い店は跡形もなかった。しばらくして祖母の遠藤とよ子さん(83)が仮設商店街に出店すると聞き、手伝うため町に引っ越した。
 最初の難関は、町名物「キラキラ丼」のメニュー化だった。商店街内の鮮魚店に駆け込んだ。店長に刺し身の切り方、盛り方を丁寧に教えてもらった。
 「商店街の良さは助け合い。『兄貴』と呼べる人もできた」と感謝する。営業中にご飯が足りなくなると、隣の店が快く提供してくれた。
 岩田さんにとっては、技術の未熟さを痛感した5年間でもあった。「観光客や工事関係者はいずれ少なくなる。もっと地域に密着した店にしなければならない」と先を見据える。理想の一皿を求め、修行に戻ることに決めた。
 共に厨房(ちゅうぼう)に立ってきたとよ子さんは「大がいたからこそ5年間続けられた。きっと一人前になってくれると思う」と見守る。
 食堂名物の焼きそばは麺を2度ふかした後、しょうゆのたれを絡めて焼く。500円と安く、手軽に胃袋を満たせる。「祖母から教えてもらった味を受け継ぎ、今度は自家製麺で挑戦したい」と目標を語った。
 さんさん商店街は来年3月3日、志津川地区のかさ上げした市街地に開業する。32店で構成する仮設商店街から23店が出店する。商店街は閉鎖を前に23〜25日、感謝セールを実施する。


2016年12月22日木曜日


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