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<わさびの里新世紀>畑ワサビ収量増に力

木々の下で青々とした葉を広げる中沢畑わさび研究会の畑ワサビ。収量を増やすことが今後の課題だ=10月中旬、遠野市青笹町中沢

 岩手県遠野市の特産品ワサビが収穫の最盛期を迎えている。昨年で栽培開始100年となった東北有数の産地は、長年の努力で培った品質が高評価を得る一方、担い手確保や生産拡大という課題を抱える。次の世紀を歩み始めた「わさびの里」の現場を訪ねた。(釜石支局・東野滋)

◎遠野生産開始から101年(中)挑戦

 林の中へ。地面を覆うように広がる畑(はた)ワサビの葉が、木漏れ日に輝く。
 遠野市青笹町の中沢地区の雑木林。農家15戸でつくる中沢畑わさび研究会が、2014年から畑ワサビの生産に取り組む。コメや野菜作りの合間に10アールで始めた畑は90アールに広がった。

<露地栽培が特徴>
 佐々木隆光会長(67)は「木を伐採しての畑造りや苗の植え付け、収穫をみんなで集まってやるのが面白い。結いの精神だ」とにこやかに話す。
 ワサビは一般的に水が流れるワサビ田で育てるが、畑ワサビは林間で露地栽培をするのが特徴。主に茎が練りわさびの原料になる。台風10号豪雨で被災した岩手県岩泉町が日本一の生産量を誇る。
 市は13年から、豊富な山林を生かして農家の新たな収入源にしようと参入を支援してきた。栽培面積は同年10アールから順調に増え、16年は410アールになった。
 冷涼な気候や堆肥が手に入りやすいなど栽培に適した条件がそろう。重労働が少なく、コメと農繁期が重ならないのも利点だ。
 研究会は今年6月、10アールで初収穫した。収量は1.2トン。目標の1.5トンを下回った。佐々木さんは「岩泉では10アールで4トン以上生産する農家がいると聞く。苗の密度を高めるなど収量を増やす努力を続けたい」と試行錯誤を続ける。
 小出地区特産物生産組合も思うように生産が伸びない。佐々木良一代表(67)は「農家を増やすには先進地のノウハウを学び、栽培技術を高める必要がある」と課題を語る。
 遠野の畑ワサビを巡る動きを関連業界も注目する。
 畑ワサビを加工処理し、大手の練りわさびメーカーに出荷する釜石市の「カネ弥」。岩手県大槌町の2工場が東日本大震災で全壊。一度は事業継続を断念したが、12年3月に同市の仮設工場で操業を再開した。

<販路確保へ奮起>
 近年は農家の高齢化で生産量が減り、需要に応えきれない状況だった。新たな調達先として遠野に期待し、1キロ350円で全量を買い取っている。
 「長年お世話になった農家の販路がなくなる。見捨てられない」。父の後を継ぎ再開へ奮起したのが社長の金崎公威(こうい)さん(27)だ。個人商店から株式会社化も実現した。
 「現在は岩泉を中心に年130トンを取り扱うが、国産原料を求めるメーカーからは500トンでも大丈夫と言われている。自社のリスク管理上、産地の分散も必要だ」と説明する。
 震災後は農家の負担軽減のため畑ワサビを泥付きで仕入れ、工場で洗っていた。15年6月には輸送ルート上の遠野に加工場を設け、一括洗浄の体制を整えた。
 金崎さんは「畑ワサビの取扱量が増えれば、工場増設や大槌での再建の可能性が見えてくる。行政とも連携し、伸びしろが十分にある遠野で生産拡大を働き掛けたい」と力を込める。


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2016年12月22日木曜日


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