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<17年度予算案決定>復興予算面では減速

 政府の2017年度当初予算案で、東日本大震災の復興特別会計は2兆6896億円となり、16年度当初を5573億円(17%)下回った。岩手、宮城両県での高台移転や港湾再建がピークを過ぎたことや、東京電力福島第1原発事故の影響が続く福島県内でインフラ整備が進み、同県関連の予算が減少に転じたことが要因。一方、原発事故の除染費用は東電負担の原則を変更し、国費を投入する。「復興・創生期間」2年目の被災3県の負担総額は16年度当初(80億円)並みの77億円となる見通し。一般会計の公共事業では、宮城県加美町の筒砂子ダムの建設用地調査費が認められた。

◎産業支援/福島の農水産物重点

 復興庁が重点配分の方針を掲げた産業支援事業には、16年度当初比310億円減の1052億円を計上した。
 新規2事業のうち、福島県農林水産業再生総合事業は47億円。同県産農水産物の流通実態を調べ、風評被害対策の実効性を高めるとともに、第三者認証の取得を支援してブランド力を強化。販路拡大を目指す。
 被災地企業の人材確保対策には9億円を充てる。インターンシップや就業体験事業を促し、被災地以外の学生、社会人を呼び込む。現地での住宅支援費を助成する。
 東北全域の活性化策として期待される観光復興事業には51億円を確保。うちインバウンド(訪日外国人旅行者)の誘致事業を支援する東北観光復興対策交付金に33億円、プロモーション費に10億円を充当した。
 福島県浜通り地方にロボット開発などの国際研究拠点を整備する「イノベーション・コースト構想」事業は101億円。中小企業の施設復旧などに充てられるグループ化補助金はニーズの減少を踏まえ、16年度当初比80億円減の210億円とした。

◎原発対応/復興拠点整備に309億円

 福島第1原発事故への対応では、除染がほぼ手付かずだった帰還困難区域に復興拠点を整備する「復興拠点内環境回復事業」に309億円を計上。地元自治体の計画を踏まえ、復興拠点予定地の除染や建物解体の費用に充てる。
 帰還困難区域を除く地域の除染は本年度でほぼ終了する見込み。環境省の除染費用は16年度比(補正予算含む)66%減の2855億円となった。除染廃棄物の搬出や仮置き場の原状回復を進める。
 除染廃棄物を保管する中間貯蔵施設(福島県大熊町、双葉町)の本格的な施設整備費には、16年度当初比40%増の1876億円を確保した。
 東電の賠償などを支援する無利子貸付枠の拡大に伴い、金融機関への利払い分を国が負担するため400億円を新規計上した。
 福島第1原発の廃炉関連では、原子力規制庁が1〜3号機にある溶融燃料(デブリ)の取り出しに向けた臨界管理評価手法の整備事業に9億円を用意した。

◎指定廃棄物/福島県内分117億円増額

 福島第1原発事故で発生した、国の基準(1キログラム当たり8000ベクレル)を超える指定廃棄物の処理費用は、福島県内分が304億円で16年度当初比117億円の大幅増となった。管理型最終処分場への搬入が本格化することに伴う。
 同県以外では、宮城県などの最終処分場整備費が120億円で150億円の減。建設候補地の反発で整備が進まないことや、放射能濃度の減衰で廃棄物量が減ったのが要因。
 基準値を下回る稲わらなど農林業系廃棄物の処理費用は14億円増の43億円。宮城県で約3万6000トンの廃棄物の焼却が進むことを見込んだ。福島県の避難指示区域内の災害廃棄物処理費は前年度までにピークを越え、300億円減の1182億円となった。

◎住まいインフラ/復旧事業ほぼ半減

 震災で被災した港湾や農業施設の再建が進み、災害復旧事業は16年度当初比でほぼ半減となる2599億円。高台移転に充てる復興交付金は約3分の1の525億円となった。
 道路建設はピークを迎える。国が「復興のリーディングプロジェクト」と位置付ける三陸沿岸道路や東北中央自動車道(相馬−福島間)など復興道路、復興支援道路の整備費は24億円増の2400億円。被災地と周辺の内陸部を結ぶ道路建設に充てる社会資本整備総合交付金も36億円増となる1090億円を確保した。
 石巻市と陸前高田市に設置する国営の追悼・祈念公園の建設費、福島県の浪江、双葉両町にまたがる祈念公園の調査費には計13億円を盛り込んだ。
 コミュニティー形成支援など被災者支援事業には1124億円を充てた。

◎筒砂子ダムなどに13億円/ILCは1億1000万円計上

 13年に事業主体が宮城県から国に移った筒砂子ダム(宮城県加美町)を含む鳴瀬川総合開発事業は調査段階から建設段階に移り、13億3200万円を新規計上した。用地調査に入り、既設の漆沢ダム(同町)の容量再編にも着手する。
 ダム関連では秋田県東成瀬村の成瀬ダムに69億5900万円、由利本荘市の鳥海ダムには21億2600万円を確保した。
 北海道新幹線の新青森−新函館北斗間のうち、青函トンネル内など貨物列車との共用走行区間について、新幹線の高速走行調査に15年度と同じ5億円を充てた。老朽化が著しい青函トンネルの機能保全対策は10億3000万円を計上。
 岩手県南と宮城県北の北上山地を候補地とする超大型加速器「国際リニアコライダー(ILC)」計画関連には1億1000万円を盛り込んだ。施設建設の調査検討費や低コスト化などを目指す加速器研究費に充てる。
 15年9月の関東・東北豪雨や今年8月の台風10号豪雨を含む激甚災害の被災地を対象にした災害防止対策費は304億円。

◎復興相「風評・風化全力で対処」

 今村雅弘復興相は22日の閣議後の記者会見で、2017年度当初予算案について「被災地のニーズを踏まえ、観光復興や人材不足の解消、福島の農林水産業の支援に力を入れる施策を準備した」と説明した。
 「今後は風評と風化という二つの課題に全力を挙げて取り組む」と強調。除染費用の国費投入に関しては「東京電力に任せて資金繰りで遅れが出るようになったらまずい。国費投入にも一理ある」と述べた。


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2016年12月23日金曜日


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