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<検証全農改革>小泉氏「負け」でも成果

全農改革を盛り込んだ「農業競争力強化プログラム」が自民党内で合意され、あいさつする小泉党農林部会長(右端)=11月25日、東京都千代田区の党本部

 政府は11月29日、農業の成長産業化に向けた「農業競争力強化プログラム」をまとめた。策定作業を振り返りながら、全農による改革の現状と東北の生産現場の声を探った。(東京支社・小木曽崇、報道部・加藤健太郎)

◎東北現場の波紋(上)論争

 「苦しんだのも事実。負けて勝つかな」
 自民党農林部会長小泉進次郎(35)の顔に疲れがにじんだ。11月25日、自民党本部。党農林関係合同会議は、全国農業協同組合連合会(全農)の改革を柱とする「農業競争力強化プログラム」を了承した。議論は大きなヤマを越えた。
 焦点は、全農が取り扱う肥料・農薬など生産資材の購買事業縮小と、農産物の販売事業強化に向けた実効策を打ち出せるか否か。小泉の疲労は、最終盤で激しく抵抗した全農との闘いの跡だった。
 「手数料は従業員と家族を養う財源。簡単に切れない」。9月下旬、小泉が委員長となって改革の方向性を議論した党農林水産業骨太方針策定プロジェクトチーム(PT)で、全農幹部は販売事業の手数料減額に否定的な見解を示した。
 小泉は強烈な違和感を口にした。「根本的な発想を変えないといけない」「農家って(全農)職員を食わせるために農業をやっているのか? それは違う」。時に駆け引きを交え、農協グループ首脳との距離をじわり、詰めていった。
 積み上げた議論は11月11日、急転する。党とは別に農協問題を検討する政府の規制改革推進会議が急進的な提言を公表。小泉らの協議は、瓦解(がかい)しかねない状況になった。
 提言は購買、販売両事業とも1年以内の抜本改革を迫った。できない場合、「第二全農」の設立まで突き付けた。党農林族は「ビーンボールを通り越したデッドボールだ」と憤った。
 皮肉にもこの「危険球」が、改革色が濃いPTの妥当性を浮き上がらせたとの見方もある。ある党幹部は「PTでの議論がストライクゾーンに見えてきた。結果的に小泉にとってプラスになった」と分析する。
 小泉は規制改革会議が示した「1年以内」の期限をプログラムで削除した。代わりに数値目標を含む年次計画の公表、政府与党による進捗(しんちょく)管理を盛り込んだ。
 「一時期はこの記載を『全て落とせ』と言われた。相当激しい抵抗だったが絶対に譲らなかった」。全農とのせめぎ合いで、名を捨て実を取る判断をした。
 小泉は交渉結果に一定の充実感を見せる。だが、宮城県内の地域農協幹部は「自己改革に取り組むさなかに国がしゃしゃり出てきて不快だ」と手厳しい。東北を地盤とする若手議員は次期衆院選を見据え、「農業団体からの風当たりは強くなる」と不安げに語った。
 プログラムの着実な進展には曲折も予想される。「真の自己改革にならなかったとき、また一つのステージが来る」。小泉はさらなる改革を示唆し、全農ににらみを利かせる。(敬称略)

[メモ]農業競争力強化プログラムは、農業者の所得向上に向けて13分野での改革を盛り込んだ。小泉進次郎自民党農林部会長が委員長を務めた農林水産業骨太方針策定PTでは「生産資材価格」「流通・加工業界構造」「人材力強化」「戦略的輸出体制」など6分野を議論した。


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2016年12月18日日曜日


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