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堤防の環境対策 漁業者懸念「土砂で海濁る」

気仙沼市を流れる鹿折川の河川堤防災害復旧工事現場。のり面(右)が覆土されているが、水際に石を置く土砂流出対策は取られていない

 東日本大震災の災害復旧事業で造る河川堤防を巡り、宮城県が環境・景観対策として、水際のコンクリート堤防面に計画する覆土(盛り土)に気仙沼市の漁業者らの間で疑問の声が上がっている。増水が起きれば覆った土砂が流出し、海の環境が悪化しかねないためだ。覆土は「県内統一の方針」(県)といい、他の河川堤防でも同様の懸念が浮上する可能性がある。

 県が気仙沼市の沖ノ田川で進める河川堤防工事では、河口から両岸約800メートルを海抜9.3〜9.8メートルに土盛りしてコンクリートで覆い、津波の越流を防ぐ。
 このうち上流部の水際のコンクリート面には、工事で出た土砂を30センチ以上かぶせる計画。コンクリートが目立たなくなり、雑草が生えて生態系や景観に配慮できるという。
 県が14日、一部の地元住民や漁業者に説明したところ「大雨で土砂が流れて濁り水が発生すれば、ウニやアワビなどの漁業に支障が出る」と覆土に反対する意見が相次いだ。
 出席した県漁協大谷支所の小野寺俊昭支所長は「震災復旧工事でも濁り水が出て困っている。磯根資源が豊富な海底に土砂が散乱したり、海が濁ったりすると漁ができない」と不安を口にする。
 県気仙沼土木事務所は「漁業への影響を考えていなかった」と釈明。懸念が相次いだことを受け、26日に広く住民らに呼び掛けて説明会を開くことにした。
 県は震災で津波が川をさかのぼって堤防からあふれたことを踏まえ、海岸の防潮堤と同じ基準で、河川下流部の堤防を高くする事業を進めている。堤防面は原則として覆土を行う。水際に石を配置して草木が根付けば、覆った土が定着してほとんど流出しないとみている。
 県河川課は「景観や自然保護のために覆土は利点がある」と理解を求める。
 県によると、豪雨で川が増水した場合は、治水上、覆土が「フラッシュ(流出)」することを前提にしている。流出後に再び覆土するかどうかは「状況によって判断する」と説明する。
 県内では、気仙沼市を流れる鹿折川のように堤防面に既に覆土された河川もある。沖ノ田川流域のような懸念が高まれば、県が説明を求められる場面もありそうだ。

◎専門家、県の対応に苦言

 河川堤防の水際のコンクリート面を覆土する宮城県の方針について、専門家は慎重に進めるべきだと指摘する。
 清野聡子九州大大学院准教授(生態工学)は「土砂が川に沈めば川の生物が窒息する恐れがあり、海に流れ込めば磯場にも影響を及ぼす。河川堤防のことだけを考えた対策と言わざるを得ない」として再検討を求める。
 県環境アドバイザーを務める鈴木孝男・元東北大大学院助教(生態学)は「水際に生物のすみかや通り道となる環境をつくるのは良いこと。いろいろなやり方で覆土流出も防げる」と一定の理解を示す。その上で「漁業者の懸念は当然。住民がきちんと納得、理解できる形で進めるべきだ」と県の対応に苦言を呈する。


2016年12月25日日曜日


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