岩手のニュース

<あなたに伝えたい>いつも一緒日々独りで実感

穏やかな表情で編み物をする利智子さん

◎狐鼻(きつねはな)利智子さん(岩手県釜石市)省造さんへ

 利智子さん お父ちゃん(省造さん)とはお見合い結婚です。両親に「いい人だ」と薦められたんですが、当時は結婚に興味がなく1週間で別れると本気で考えていました。おかしいでしょう? 結局40年以上も連れ添いました。
 いつも穏やかで、にこにこしている人でした。けんかした記憶はほとんどありません。文句はお父ちゃんが酔っぱらっているときに言いました。お酒を飲むと、いつも以上に優しくなるんです。大好きでした。
 震災では、周囲に声を掛けながら別々に自宅を出ました。着いた高台に姿はなかった。2日後、避難誘導中に流されたのを見たと近所の人に聞きました。職業柄、交通安全への意識は高く、交通指導員を長年やっていました。逃げて来る人は高齢者や病人が多かった。放っておけなかったんだと思います。
 よく冗談で「私より先に死なないで」と話していました。遺体安置所で対面したのは、普段のにこっとした笑顔です。やりきれなくなり、思わず「何で津波で死ぬの? 逃げれば良かったべ!」と怒りました。
 毎朝「お父ちゃん、おはよう」と声に出します。日中も独り言のように会話しています。以前、夜に大きな地震があったとき夢に出てきて「地震だ、早く起きろ」と言ってくれました。いつも一緒にいると強く感じます。
 内陸に再建した家に住んでいます。仮設住宅で仲間と始めた編み物が趣味になりました。今も週2回、仮設の集会所でおしゃべりしながら編みます。元気をもらい、支えられています。

◎忘れられぬ笑顔夢にも登場

 狐鼻省造さん=当時(73)= 釜石市鵜住居町で妻利智子さん(72)と暮らしていた。タクシー運転手を定年退職後は近所の友人たちと夜な夜な集まり、お酒を酌み交わすのが楽しみだった。東日本大震災で避難途中に津波にのまれ、遺体は約1週間後に見つかった。


2016年12月25日日曜日


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