秋田のニュース

<道しるべ探して>農村と都市 笑顔の実り

わらび座には毎年、全国の学校から就農体験の礼状や写真が届く=仙北市

 人口減少率、高齢化率ともに全国ワーストの秋田の田舎を、年間1万8000人もの中高生が訪れる。
 都会っ子と農村の橋渡しを演出するのは、仙北市に根を張って六十有余年を数える劇団「わらび座」だ。

◎とうほく共創 第7部響き合い(中)携える手

 「人間と出会う旅」と銘打った就農体験は、農家の協力を得て約40年続く地元の風物だ。子どもたちはミュージカルを鑑賞し、踊りや農作業を全身で学ぶ。
 子どものコミュニケーション能力をどう引き出すかが近年、どの学校でも共通の悩みになっている。「子どもたちの心を解きほぐすような体験をさせたい」とわらび座営業部長の阿部裕志さん(49)は言う。

 農作業を手伝い、農家で一緒に食事をすると、最初はふてくされた態度の子も笑顔に変わっていく。
 「都会の親は忙しすぎて、家族みんなで食卓を囲むことが少ないみたい」と阿部さん。最終日には、ほとんどの子が泣きながら「帰りたくない」「将来はこんな家族をつくりたい」と感想文を読み上げるという。
 協力農家は約30軒。30年間、稲刈りの時期に受け入れている雲雀(ひばり)潔さん(69)は「秋の貴重な日なので仕事は滞るが、子どもたちの喜ぶ顔や成長する姿を見たくて、つい頑張ってしまう」。
 「人間は自然の中で生かされている存在だと、子どもなりに理解するようだ」。子どもたちから届いたお礼の寄せ書きや写真に雲雀さんが目を細めた。

 見渡す限りの水田が広がる秋田県大潟村で昨年、有機栽培米「浦安こまち」の生産、販売が始まった。
 「市民のために安心安全なコメを作ってほしい」。全国で唯一、農地のないまち千葉県浦安市の依頼を受けた。7年前から始まった相互交流を積み重ね、ついに大潟のあきたこまちに「浦安」の名が付いた。
 村は農家に委託して2.6ヘクタールを確保。今夏は浦安の子どもたちが、民泊しながら田んぼの除草を手伝った。
 収穫した浦安こまちは、浦安の商業施設などで販売する。浦安の祭りには大潟の子どもたちが駆け付けて「大潟のお米、買ってけれー」。
 評判も上々で、まとめ買いする人もいる。村産業建設課の小野寺紀裕さん(30)は「村を都会にアピールするツールになっている」と強調する。
 手を携える都市と農村。その果実が、たわわに実っていた。


2016年12月25日日曜日


先頭に戻る