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震災、原発事故…コメ作り省力化加速

直播用のもみ加工機をチェックする「ふぁーむ・しどけ」のメンバー=南相馬市原町区雫

 福島県沿岸の相双地方で、稲作の省力化に向けた取り組みが加速している。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故による農業従事者の減少を受け、直播を導入するケースが急増。地域産業復興を後押ししようと、福島県も農機具の開発支援に力を注いでいる。(南相馬支局・斎藤秀之)

<従事者が減少>
 種もみを直接水田にまく直播は、苗の移植より労力が軽減できるとされ、近年各地で導入が進んでいる。福島県相双農林事務所の推計では、今年は域内で300ヘクタール程度で導入されたとみられる。域内の作付面積に占める割合は7%強。2%に満たなかった震災前の水準を大きく上回る。
 最大の要因が農業者の減少だ。津波で農機具などが流失した上、原発事故による避難者も今なお多い。限られた人手で広大な土地を耕作するには、作業の合理化が避けられない。
 南相馬市の沿岸部に拠点を置く農事組合法人「ふぁーむ・しどけ」は直播を導入した生産法人の一つ。資材メーカーの指導を受けながら、今春、作付けした17ヘクタールの半分で試みた。
 法人は数年後に地域の100ヘクタールを手掛ける計画を立てている。かつて60戸ほどで耕作していた面積を10人のメンバーで担わなければならない。直播は将来を見据えた経営判断だった。
 移植なら5月に集中した春の作業が、直播なら3月に着手できる。代表の高田光定さん(63)は「移植と組み合わせれば作業の平準化が可能。適期を逃さず作付けできるメリットは大きい」と話す。
 原発事故の風評被害もあり、福島県沿岸部のコメ作りは飼料用への転換が進んでいる。補助金で主食用と遜色ない所得が確保されているとはいえ、政策誘導が永久に続く保証はない。
 相双農林事務所は「飼料用の米価は主食用に大きく劣る。コストダウンの必要性は高い」と指摘。技術指導などを通して直播の普及に努めている。
 福島ではさらなる合理化への模索も続く。

<無人機も視野>
 県は11月、メーカーが開発中の無人トラクターの見学会を南相馬市で開いた。原発被災地の農業関係者らを招き、改良点について意見を求めるのが目的だった。
 実験用の農地を提供したのは地元の農業会社。2年後には100ヘクタールをわずか2人で耕作する予定になっている。代表の佐藤重久さん(69)は「無人機なら作業効率は2倍。若手にとっても参入の敷居が下がる」と期待感を示す。
 原発事故による避難区域を抱える福島では、これから農業復興を目指す自治体も少なくない。県農業振興課は「現在、除草ロボットなどの開発も支援している。省力化を進めることで営農再開を後押ししたい」と説明する。


2016年12月26日月曜日


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