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<女川凍る再稼働>震災克服か リスク拡大か

高さ29メートルへの防潮堤かさ上げ工事など、大規模な安全対策工事が進む東北電力女川原発。左手前が2号機

 東北電力が2013年12月、原子力規制委員会に女川原発2号機(宮城県女川町、石巻市)の新規制基準に基づく適合性審査を申請し、16年12月27日で丸3年になった。審査は長期化し、焦点の地震・津波分野はようやく詰めの議論に入った。地元住民は再稼働への期待と不安で揺れ動き、自治体は避難計画づくりを本格化させている。東日本大震災からまもなく6年。女川原発の再稼働を巡る今を検証する。(原子力問題取材班)

◎2号機審査申請3年(上)ギャップ

<見直し余儀なく>
 16年12月9日の審査会合。耐震設計の根幹をなす「基準地震動」(最大想定の揺れ)を巡り、東北電が示した設定の考え方に、規制委側から厳しい指摘が相次いだ。
 「それは3・11地震のシナリオ。今後起こりうるシナリオではない」「3・11の観測記録ではなく『3・11型』の想定に余裕を持たせるかどうかだ」
 女川原発は震災で被災する前にも、想定を超える揺れに見舞われている。三陸南地震(2003年)と8・16宮城地震(05年)がそうだ。いずれも当時の基準地震動を上回り、想定の見直しを余儀なくされた。
 震災の経験と記録を重視する東北電に対し、規制委はより幅広いリスク想定を求める。震災の震源に最も近かった「被災原発」。東京電力福島第1原発と同じ太平洋岸にありながら「地震と津波に耐えた原発」。女川が持つ二つの顔はなかなか重なり合わない。

<繰り返しジャブ>
 宮城県の有識者検討会のメンバーで、東北大災害科学国際研究所の源栄(もとさか)正人教授(地震、耐震工学)は過去の地震が設備に与えた影響を懸念している。
 「完工から20年以上、繰り返しの揺れでジャブを打たれてきた。これだけアクティブに揺らされた原発はない」として、原子炉などの主要設備より、それらをつなぐ配管などの「つなぎ目が弱点」とみる。女川2号機の再稼働は、日本の原発の経験したことがない領域と言える。
 審査は再稼働した九州電力川内原発など「加圧水型」が先行。女川2号機など「沸騰水型」は出遅れたが、設備運用面など各社共通のテーマは議論が粛々と進む。規制委からは「プラント(設備)に大きな論点はないように思う」(更田豊志委員長代理)との言葉も出て、「合格」に向かう道筋が姿を現しつつある。

<地に落ちたまま>
 新規制基準は事故の反省に立ち、炉心損傷などの重大事故に至るシナリオを網羅的に分析する「確率論的リスク評価」の手法が重視されている。
 新基準について、原子力のリスク研究に携わる東北大大学院の高橋信教授(ヒューマンファクター、システム工学)は「幅広い事象を考慮し、以前より安全になっていることは確実に言える」と評価する。
 一方で新基準と審査が、事故で深まった原子力業界と世論とのギャップを埋めていない事実も指摘する。
 「原子力への信頼は地に落ちたままだ。世論が規制委や政府を信じられるかどうか。技術的な安全性以上の問題かもしれない」


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2016年12月25日日曜日


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