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「お供え」一人親家庭に 仙台の寺院など支援

支援先に送る供え物を箱詰めする松島さん(左)と中村さん(右)=仙台市若林区の愚鈍院

 仙台市や岩手県奥州市などの寺院が、仏前に供えられた食品を「おさがり」として経済的に苦しむ一人親家庭にお裾分けする活動に取り組んでいる。宗派を超えた全国の寺が各地の支援団体と連携。貧困の連鎖、食べ残しや期限切れで捨てられる「食品ロス」が社会問題化する中、「宗教者としてできることから始めたい」と言う僧侶らは、地域の橋渡し役として物資と共に見守りの心を届ける。
 仙台市若林区の愚鈍院住職中村瑞貴さん(56)は1、2カ月に1回程度、供え物を段ボールに詰め、宮城県内の支援団体に送る。お盆や彼岸、法事の際に檀信徒らが供える菓子や果物などは食べる前に消費期限が切れたり、傷んでしまったりする物も少なくない。
 東日本大震災直後、寺には多くの人が身を寄せ、支援物資の仕分け拠点になった。「大切な食べ物を無駄にせず、少しでも多くの人のために役立てたい」と中村さん。被災者支援の活動が落ち着いた今年6月に始めた。
 支援先の家庭と直接顔を合わせることはない。その代わり、返礼のメッセージが届く。中村さんは「手紙から親子一緒に喜ぶ様子が浮かんでくる。仏と檀信徒の救いの心を、支援につなげたい」と話す。
 奥州市江刺区の興性寺は今年2月から取り組む。副住職の司東隆光さん(33)は「震災孤児や貧困に苦しむ子どもを支えたいと前々から考えていた。寺の活動を知り、食品を寺に届けてくれる人もいる」と手応えを口にする。
 中村さんや司東さんが参加するのは「おてらおやつクラブ」。奈良県田原本町の安養寺住職松島靖朗さん(41)が2014年1月、本格的に活動を始めた。
 参加する寺院は現在、47都道府県で470カ寺を超えた。140近い支援団体を通じ、毎月延べ約4400人の子どもの元に物資を届ける。東北では、宮城県内11の寺をはじめ計24カ寺が参加する。
 松島さんは「寺は前面に出ず、一人親家庭と支援団体のつながりを後方支援する。子どもの貧困問題に社会全体で向き合いたい」と話す。
 クラブの連絡先はファクス050(3488)0963、電子メールはmail@otera−oyatsu.club

◎「貧困問題の解決に」奈良の住職が講演

 おてらおやつクラブ代表の松島靖朗さん(41)は11月、仙台市で開かれた宮城県宗教法人連絡協議会の研修会に招かれ、活動の背景や思いを語った。
 松島さんは、子どもの6人に1人が貧困状態にある一方、年間600万トンもの食品が捨てられる国内の状況に言及。「1日1食の食事にすら困り、餓死してしまう母子家庭がある。食品が集まってくる寺の社会福祉活動として、貧困問題の解決に少しでも役立ちたい」と話した。
 大阪市で2013年に起きた母子餓死事件をきっかけに、同年秋に同市の母子家庭支援団体と協力して取り組みを開始。14年1月にクラブを設立し、すぐに十数カ寺が協力してくれた。
 松島さん自身も母子家庭で育った。「経済的に困ると孤立しがちだ。見守ってくれる人がいて本当にありがたいという言葉を支援先からもらう。全ての苦しむ人を救う『仏助』を広げたい」と呼び掛けた。


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2016年12月28日水曜日


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