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<ポケモンGO>社会的責任 見いだす

津波に流された映画館「岡田劇場」が映るスマートフォンを掲げる河合さん。石巻市内にはポケモンGOのゲーム上で震災前の姿を見られる場所がある=石巻市中瀬

 企業の社会的責任(CSR)。21世紀、世界の企業に浸透し始めた概念だ。東日本大震災後、東北の被災地には無数の企業が足を踏み入れ、試行錯誤を重ねた。艱難(かんなん)の地へ、生活の糧を、癒やしを、希望を。企業を突き動かした衝動は何だったのだろう。あれから間もなく6年。CSRを足掛かりに、あの日に返って経済社会を展望する。見えてくる明日を、私たちは「トモノミクス」と呼ぶ。

◎トモノミクス 被災地と企業[1]プロローグ(上)めぶく

 2016年、世界を席巻したスマートフォン向け人気ゲーム「ポケモンGO」で近未来の企業像を占う。
 同年11月、津波になめ尽くされた石巻市内に架空の生き物「ポケットモンスター」が現れた。「レアなポケモンが出現するイベントがある」。1万人超が集まり、潮の匂いをかぎながら被災地を歩いた。
 ポケモンGOの運営会社、米ナイアンティックの製品本部長河合敬一さん(41)=仙台市出身=。衛星利用測位システム(GPS)を使った位置情報システムのプロは、実際に街に出てプレーする画期的なゲームの核心技術を支えた。

 同社の社是は「アドベンチャー・オン・フット(歩いて冒険に出よう)」。
 自分の周りに何があるのかを知り、周囲を幸せにする。それが世界中で起これば世界は良くなる。
 「ポケモンGOを東北に来るきっかけにしてほしい」
 河合さんは、被災地の課題解決の一端をポケモンGOに託す。願いは企業と消費者、被災地の「三方よし」の関係だ。
 昨年7月の公開後、世界で6億回ダウンロードされ、人々は地球20万周分を歩いた。石巻市のイベントの経済効果は、前後の期間を合わせ約20億円(宮城県調べ)に上った。にぎわいをどう生むか。処方箋の一つがここにあった。
 河合さんは15年9月まで米検索大手グーグルの地図担当責任者だった。震災の日は、シリコンバレーの自宅にいた。
 「妻の(南相馬市に住む)祖母は大丈夫か」
 業者から送られた衛星写真に息をのむ。祖母がいた場所は無事だった。「安否を確かめたい人は大勢いる。一刻も早く、沿岸部の写真を公開しよう」
 グーグル社内で議論する時間も惜しい。独断で画像情報を発信した。アクセスは数百万件に達した。「できることを全部やる」。同社は本業として情報発信を軸に被災地に関わり続けた。

 ネット上で街並みの写真を閲覧できる同社のストリートビュー。この機能を駆使し、震災遺構や復興の過程を記録する「デジタルアーカイブ」が11年7月に始まった。震災の記憶を継承し、風化にあらがう。
 被災者の声が寄せられた。「被災前の自宅が映る唯一の写真。消さないで」。河合さんは「必ず残す」と約束した。14年4月、ストリートビューに過去の写真を表示する「タイムマシン機能」が誕生。被災地の声はビジネスを生んだ。
 河合さんは言う。「もうけが第一ではない。より良い社会をどうつくるか、真剣に考える。それが企業価値の拡大につながる」
 ビジネスと被災地に血が通う。復興とCSR。新たな価値観が生まれた。
(「被災地と企業」取材班)


2017年01月03日火曜日


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