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<キラリこの技>軽く精密 金属部品鋳造

鋳型に溶けた鉄を流し込む作業。1500度を超える鉄を流すと砂の鋳型が炎を上げる
Hプロセス工法で作った自動車部品(右)。他社製品(左)と比べると仕上がりが薄く、重量もコストも大幅にカットできる

 東北で独自の技術やユニークな発想でものづくりを続け、存在感を発揮する企業がある。昨年夏の連載に続き、優れた技を持つ企業を訪ねた。

◎東北ものづくりPart2(1)会津工場(福島県只見町)

 福島県会津若松市から車で2時間。真冬は積雪が3メートルを超す山間の町に、世界で唯一の技術を持つ工場がある。
 鋳造部品製造「会津工場」(福島県只見町)のHプロセス鋳造技術は、高精密で軽量の金属部品を一度に大量生産できる。月100万個を超える生産品の大半がエンジンなどに使う自動車部品。国内の全自動車メーカーをはじめ、ベンツ、BMW、GMなど欧米車にも採用されている。
 元々はイギリスで開発された技術で、同社は1983年に権利を買って只見に持ち込んだ。最初は失敗続きだった。技術導入で中心的な役割を担った鈴木直記社長(55)は「8割が不良品。完全にお手上げだった」と振り返る。
 砂を固めた鋳型に溶けた鉄を流し込み、金属製品を作るのが鋳造技術。H(ホリゾンタル=水平)プロセスは鋳型を横に並べ、同時に複数の製品を作れるのが利点だ。溶けた鉄を流す制御技術は、なかなか確立できなかった。
 88年、鋳型を作るための金型を自製し始めたのが転機となった。「他社に頼むと細かなニュアンスがどうしても伝わらなかった」(鈴木社長)。砂の配合を変えるなど試行錯誤を重ね、世界で初めて生産システムを構築した。
 鋳造品の厚みは最小4ミリとされるが、同社では2ミリまで落とせる。重量もコストも抑えた高精度の部品を求め、同社にはトヨタを始めとした大手メーカーの技術者が日参する。
 自動車部品以外の分野にも進出を目指す。「世界中の車がうちの部品を使っているが、外からは分からない。社員のモチベーションのためにも目に見える製品を作っていきたい」と鈴木社長。見せてくれたのは只見名物マトンを焼くジンギスカン鍋。ただの鍋と侮ってはいけない。自動車の空冷技術を応用して火の回りを良くするなど、同社らしさがキラリと光っている。

●記者のひとこと/「町工場」世界をリード

 鈴木社長を含め、社員はほぼ全員が地元出身。「家の位置も家族構成もだいたい知っているよ」(鈴木社長)。離職率はほぼゼロという。昭和の町工場を思わせるような雰囲気と、世界をリードする技術のギャップが面白い。(報道部・安住健郎)


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2017年01月06日金曜日


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