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<ここにもレガシー>人集い心一つに

福島県高校総合文化祭活動優秀校公演に出演した郡山市内の高校合唱部員ら=昨年12月18日、いわき市
オーストリアでの公演に向け練習を重ねる福島県合唱連盟「ユース合唱団」=昨年12月27日、福島県猪苗代町

 遺産(レガシー)。それは先人からの贈り物であり、現代を生きる私たちから未来の人々へのメッセージだ。有形、無形を問わず内容は多岐にわたる。新たな年の始まりに、東北各県に数多くある遺産の一端を再認識してみよう。

◎2017東北から未来へ(5)福島県 合唱文化

 冬休み中の校舎にハーモニーが響く。昨年12月下旬、福島県郡山市大槻町の郡山高。「音を伸ばすときは小節をまたぐように」「ここはアクセントをしっかりつけて」。同校合唱団の40人がパートごとに練習に励む。
 福島県は小学生から社会人まで合唱が盛んだ。中学、高校の合唱部の実力は特に高い。全日本合唱コンクール全国大会は例年、県勢が上位に名を連ねる。

<続く金賞の歴史>
 昨年の第69回大会は、高校の部で郡山高と会津高が金賞を受賞。中学の部で郡山五中が同声(女声)、混声の両部門で文部科学大臣を獲得し、史上初となる2部門での4年連続日本一に輝いた。郡山二中と会津若松市の四中も金賞に選ばれ、出場全校が銀賞以上に入った。
 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故が起きた2011年も、金賞受賞の歴史は途切れなかった。県合唱連盟の菅野正美理事長(61)は「指導者や生徒の横のつながりが切磋琢磨(せつさたくま)を生んでいる。合唱部の出身者が指導者として地元に戻ってくる好循環もできている」と話す。
 「合唱王国」の系譜は終戦直後にさかのぼる。1947年に高野広治さん(故人)が中心となって福島市で「FMC混声合唱団」を結成し、全国大会の常連となった。
 高野さんらは60年代、レベルアップを目指し、東京混声合唱団創設者の田中信昭氏に師事。刺激を受けた県北や会津地区の高校の指導者が、自費で中央の講師を招いた講習会を開くなどして研さんを重ねた。
 会津農林高を指導し、70年に県内高で初の金賞に導いた高麗正宣さん(74)=県合唱連盟名誉会長=は「指導者同士が選曲や指揮の技術を隠したりしないオープンな雰囲気があった。『情報開示』の伝統が今も残っている」と言う。

<行政支援も充実>
 行政も支援を惜しまない。「楽都」を掲げる郡山市は2005年度から、著名な声楽家らを小中学校の合唱指導に招くなどの事業を展開。県主催の声楽アンサンブルコンテスト全国大会は、国内トップクラスの団体が集まる。
 合唱連盟は今年3月末、設立70周年を記念し「ユース合唱団」をオーストリアの首都ウィーンなどに派遣する。オーディションで選ばれた10〜20代を中心とする約40人が音楽の聖地のステージに立つ。
 連盟の海外公演は10年ぶり2度目。原発事故から6年を経た時点での晴れ舞台となる。代表の村上直樹さん(24)=田村高教諭=は「『福島は元気になったよ』と伝えたい。さらに、福島には文化の若い担い手がたくさんいることを知らせたい」と意気込む。
 人が集まり、心を一つにして、歌声を響かせる。脈々と受け継がれる合唱文化は、原子力災害からの復興に向かう福島に潤いと希望を与えている。(福島総局・大友庸一)

[メモ]福島県合唱連盟は中学生から社会人までの156団体が加盟する。中学の70団体は人口割合で全国トップの加盟数。合唱人口の裾野を広げようと県合唱連盟は2016年、全国に先駆けて県合唱コンクールに小学校部門を新設した。


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2017年01月06日金曜日


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