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<山形知事3期目>具体策の積み上げ必要

航空機部品を検査する従業員。今後20年間は成長が続く見通しの航空機産業だが、県内企業の参入は少ない=寒河江市のスガサワ

◎吉村県政3期目の課題(中)産業振興

<数値目標上積み>
 「製造業付加価値額1兆2500億円」。吉村美栄子知事(65)が昨年12月下旬に発表した3期目の政策集で、この数値がひときわ目を引いた。2期目の公約の1兆円から2500億円も上積みしていたからだ。
 製造業付加価値額は、製品売上高から材料費などの原価を差し引いた総利益を表す数値。2007年のピーク1兆1488億円から09年には6828億円にまで落ち込んだ。08年のリーマン・ショックの影響だ。直近の14年は8358億円まで回復したが、1兆円に達する兆しはない。
 加えて山形のものづくりを支えたパソコンなどの情報通信機器と、半導体などの電気電子デバイスの両エースは世界的な競争にさらされ厳しい状況にある。吉村氏が掲げたのは相当に挑戦的な目標と言える。
 「10年前、20年前とは全く産業構造が変わってしまった」と、県内の半導体事業をけん引してきたエムテックスマツムラ(天童市)の間清治社長が指摘する。
 同社は1990〜2000年代の主力商品だった半導体メモリーの国内生産を全て取りやめ、ベトナム工場に生産ラインを移した。間社長は「拠点は県内外どころか国内外にもこだわっていられない」と漏らす。
 構造変化を受け、県も新たな産業育成戦略を練る。

<成長分野を支援>
 山形大、慶応大先端生命科学研究所(鶴岡市)などで製品化の研究が進む有機エレクトロニクスやバイオテクノロジーの先端分野では、関連企業の県内集積を目指す。航空機や自動車、ロボット、環境、医療、農業を「成長6分野」と位置付け、支援に力を注ぐ。
 航空機産業は格安航空会社(LCC)の成長もあり、世界的に今後20年間で3万機以上のジェット旅客機の生産が見込まれる。県内の航空機産業の中核を担うスガサワ(寒河江市)も、ボーイング737の自動操縦の部品製造などを請け負い、業績が好調だ。
 航空機部品は個別納入よりも、ある程度部品を組み立てたユニットで納品する方が信頼度が高まるとされる。長谷川俊明管理室長は「県内にビジネスパートナーがいると、受注量を増やしたり別の受注ができたり可能性が広がる」と話す。

<集積には程遠く>
 県は航空機部品加工の国際認証「Nadcap」を取得するための補助金制度を創設。情報交換や勉強会を行う「県航空機産業地域戦略研究会」も発足させ、参入支援を展開し始めた。
 だが、長谷川室長は「県内企業にも参入のチャンスは十分あるのに、意欲のある企業が少なく、集積には程遠い」と残念そうに語り、先導役としてもっと力を注ぐよう県に注文する。
 「1兆2500億円」は、県が昨年公表した「県産業振興ビジョン」に準じたが、国の名目成長率と県の施策効果を見込んでおり、算定根拠に乏しい。
 机上ではじき出した数値目標より、県内企業の成長を後押しする具体的な産業振興施策の積み上げこそが求められている。
(山形総局・宮崎伸一)


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2017年01月08日日曜日


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