岩手のニュース

<成人式>元野球部 震災犠牲の仲間と共に

成人式で菅野さんの遺影を抱く佐藤さん(手前左)、紺野さんの遺影を持つ村上さん(手前右)らチームメート

 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故で大きな被害を受けた岩手県と福島県の被災自治体は8日、9日の成人の日を前に、各地で成人式を行った。旧交を温め合った若者たちは、亡き友を思い、傷ついた古里の再生を信じて大人の一歩を踏み出した。

 岩手県陸前高田市小友中(現高田東中)の元野球部員たちは8日、東日本大震災で犠牲になったチームメートの菅野孝太さん=当時(14)=、紺野将成さん=同=と共に、市内であった成人式に臨んだ。
 野球部は震災で2年生2人、1年生6人が亡くなった。大学生の佐藤春希さん(20)と村上大さん(19)は、2年生だった2人にスーツを着せた遺影を胸に抱き、「大きな区切りに一緒に出られて良かった」と語った。
 いたずら好きだった菅野さん。野球となると真剣で、たびたび逆転の口火を切ってチームを勢いづかせた。思いやりがある紺野さんはみんなの相談相手だった。
 小規模校で、小学校からずっと同じクラス。スポーツ少年団からともに白球を追い、家族のように喜怒哀楽を分かち合ってきた。
 佐藤さんは、部員の遺体が見つかるたびに安置所で対面した。あまりに泣き過ぎて最後は涙も出なくなった。村上さんは、亡くなったことを信じたくなくて安置所に入れなかった。
 震災後も一緒にいるとの思いは変わらなかった。
 教室に2人の机を残し、席替えでは担任が代わりにくじを引いた。卒業式では、遺影と、好きだったアニメキャラクターのフィギュアを持った。校長に頼んで2人の名前を呼んでもらい、クラス全員で返事をした。
 あの日、部員たちは午後から自転車で市中心部に買い物などに出掛け、指定避難所の市民体育館で津波に遭った。生徒会の仕事があったり、自転車が故障していたり、昼寝をしてしまったりして行けなかった部員が生き残った。
 佐藤さんは、当時17歳だった姉が行方不明。娘を探し続けた父も病気で亡くした。「身近な人を大切にし、地元を大事にしようという気持ちが強くなった」と言う。
 村上さんは、菅野さんに貸して壊れたシャープペンを今も筆箱に入れている。「死後、俺は楽しく生きてきたぞと、話せたらいい」。還暦もみんなで一緒に迎えるつもりだ。


2017年01月09日月曜日


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