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施設で暮らす子の素顔詠む 園長が歌集出版

歌集を手にする佐野さん

 仙台市太白区の児童養護施設「仙台天使園」の佐野督郎(とくろう)園長(75)が、歌集「カナヘビ荘日記」を出版した。経済的な事情や虐待などの理由から親と離れて施設で暮らす子どもたちを主な題材に、親や家庭への思い、喜びや悲しみを短歌で表現した。子どもたちの素顔が伝わる作品だ。
 天使園では、幼稚園児から小中高校生まで3〜19歳の71人が生活する。作品には子どもたちの親に寄せる思いがうかがえる。
 <どんなにか母面会に来ることを待ちゐしことか涙の寝顔>
 <一人にてサッカーボールを蹴りてゐる少年は待つ母の電話を>
 不安も入り交じる。
 <緊張のあまりかシクと泣き始む明日は父が会いに来るとふ>
 <明日は園を出(いで)ゆくといふ少年の激しき嘔吐(おうと)廊を駈(か)け行く>。
 胸に去来する複雑な思いを推し量った一首も。
 <家庭復帰を明日に控へし少年の飛ばす紙飛行機の長き滑空>
 歌集の題は、虫好きの子どもが「カーちゃん」と呼んでカナヘビを追い掛け回す様子から着想した。「母ちゃん」と聞こえ、切ない思いにかられたという。
 <児童養護施設の廊下を金蛇が這(は)ひをり名前など付けられて>
 幅広い世代の子が共に過ごす。
 <良い子だとあめ玉ひとりにあげたれば園長室前は子らの行列>
 <寝小便タレのカズオが見せに来る八十点の算数テスト>
 登場人物を仮名とし、ドラマのようという毎日の情景を描いた。
 <高校の合格告ぐる少年の肩の春雪を払ひつつ聞く>
 佐野さんは元高校教諭。宮二女高、聖ドミニコ学院高などの校長を務め、2013年に仙台天使園園長に就いた。「施設の様子を歌に詠んで本にすることにためらいもあったが、歌の力は大きい。子どもたちへの理解につながればと思った」と語る。
 佐野さんが懸念するのは施設の子たちの将来。原則18歳で退所しなければならないが、親の支えが受けられない例が多く、退所後の新生活でつまずきやすいという。「専門学校で資格を取ったり、就職後の生活費を援助したりといった自立支援が欠かせない」と仙台天使園のウェブサイトで募金を呼び掛けている。

[メモ]歌集は398首を収め、昨年10月発行。1800円(税別)。佐野さんの歌集は3作目。連絡先は発行元の飯塚書店03(3815)3805。


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2017年01月11日水曜日


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