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<キラリこの技>換気口 温度変化で開閉

形状記憶合金製のばねが温度変化で正しく伸縮するかどうか、1本ずつ検査する社員

 東北で独自の技術やユニークな発想でものづくりを続け、存在感を発揮する企業がある。昨年夏の連載に続き、優れた技を持つ企業を訪ねた。

◎東北ものづくりPart2(3)佐原(岩手県一関市)

 「いつも快適な空気環境で過ごしてもらいたい」
 住宅の床下やサッシに使う換気装置のシェアが全国の7割を占める佐原(岩手県一関市)は、そんな思いを原点に技術開発に励んできた。
 形状記憶合金を使った床下換気装置は、気温の変化だけで開閉する優れものだ。温度が変わると合金製のばねが伸縮し、暑い時は給気口を開けて風を通し、寒くなると閉じて蓄熱する。電気も人の手も使わない。
 同社の換気装置は東日本大震災の被災地・石巻市で活躍した。プレハブ仮設住宅に2011年末から12年にかけて施工された寒さ対策に採用され、1万5000世帯の床下に計3万個が取り付けられた。
 田中義之製造本部長(59)は「被災者を思い、少しでも仮設住宅の環境を改善しようとほとんど寝ずにフル生産した」と振り返る。
 1956年創業。元々は板ガラスや鏡の販売店だった。一関市の厳美渓近くにあるサハラガラスパーク(93年開館)の運営会社としても知られる。60年代に木製サッシの製造を始め、「これからはすきま風が入らないアルミサッシの時代になる」とアルミ製に切り替えた。
 当時の住宅は練炭こたつやまきストーブが多かった。アルミサッシの高気密性が原因で、一酸化炭素中毒になる人が実際に出てしまった。「換気できるサッシが必要だ」。同社の開発が始まった。
 試行錯誤の結果、たどり着いたのが「換気ブレス」だ。サッシ上部に手動式の換気窓を付け、手軽に給気できるようにした。すぐに全国の住宅に広まった。
 研究は続き、火災の熱を感知するとサッシの換気口内にある特殊素材が膨張し、空気や煙の出入りを抑える技術などを開発。現在では同社の売り上げの約9割を換気関連商品が占めるようになった。
 田中本部長は「『自分たちが不便に感じたことを解決する』が新商品の出発点。快適な暮らしを追い求め続ける」と力を込める。

●記者のひとこと/快適な給気追い求める

 「次は給気の質を変えることを考えているんですよ」。田中本部長はさらりと話す。空気清浄機能付きエアコンのような換気装置というから驚きだ。形状記憶合金を人工衛星で使う技術開発も手掛けているという。ものづくりへの探求心と自負を言葉の端々に感じた。(報道部・田柳暁)


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2017年01月11日水曜日


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