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<あんぽ柿>出荷量 原発事故前の8割回復

本年度稼働した「あんぽ工房みらい」で、皮むきを終えて薫蒸工程に入る前の柿=昨年11月、伊達市梁川町

 東京電力福島第1原発事故で打撃を受けた福島県北特産の「あんぽ柿」生産が回復軌道に乗っている。主産地・伊達地区の出荷自粛は大半で解除され、本年度の出荷量は事故前の8割まで戻る見通し。地元農協は新設した全自動の加工場などを武器に、ブランド力アップの反転攻勢を目指す。(福島総局・柴崎吉敬)
 伊達市内で昨年12月にあった出荷の出発式。ふくしま未来農協(福島市)をはじめ、集まった関係者は「やっとここまで来た」と産地復活を実感した。
 あんぽ柿は桑折、国見の2町を含む伊達地区が主産地。年間出荷量は1200トン前後に上っていた。それが原発事故で2011、12年度と全面的に出荷自粛を余儀なくされた。木の皮を剥いで高圧洗浄機で洗い、枝を切るなど約26万本の除染作業を続け、13年度に一部で出荷再開が実現した。
 再開に当たっては、夏の小さい実の段階で放射性物質濃度を測定。国の基準(1キログラム当たり100ベクレル)の10分の1以下が農地の8割を占める場所を「モデル地区」にした上で、全量検査で安全性を確認して出荷するようにした。
 取り組みの効果が実り、一部を除く伊達地区の大半がモデル地区に。本年度の出荷量は「約940トンが目標」と言えるまでになった。
 さらなる拡大へ、農協が昨年6月、伊達市内に整備したのが「あんぽ工房みらい」だ。皮むきから包装まで、ほぼ全工程を自動で行う。農家の作業量は大きく減り、衛生管理も徹底され、出荷の安定と品質向上が期待される。
 柿農家も高齢化が課題となっている。農協によると、伊達地区の生産者約850人のうち、およそ4分の3が60歳以上という。
 加工の負担軽減はより重要性を増しており、ふくしま未来農協伊達地区あんぽ柿生産部会長の宍戸里司さん(65)は「いずれは加工をやめる農家が出てくる」と指摘。加工場の有効性が高まるとみる。
 農協は5年後をめどに、加工場の取扱量を伊達地区全体の3分の1程度まで増やしたい考え。数又清市常務理事は「産地のブランドを守るには、伊達地区全体で1000トン以上を安定的に出荷し続けることが大前提だ」と強調する。
 後継者を育成する活動も始まった。農協は昨年秋、30代以下の生産者を対象に研修ツアーを初めて開催。就農希望を含む約20人が長野県内の果樹農家などを訪れ、栽培技術を学んだ。
 同2月にはあんぽ柿を使った和菓子やケーキを開発して発売するなど、農協は6次商品化にも乗り出している。
 消費者からは時折「安全性は大丈夫か」と聞かれるなど、完全には風評を払拭(ふっしょく)できていない。数又常務は「寒空の下、生産者と共に木を一本一本除染して、階段を1段ずつ上ってきた。あと一歩を乗り越えたい」と力を込める。


2017年01月11日水曜日


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