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<キラリこの技>新技術 木材を波形加工

ローラー機(右)やプレス機(奥)が集まる製造工場で、カバの板を加工する社員=弘前市
波形板を利用した鍋敷き(手前右)やランプシェード(中央)、空気清浄機(手前左)などの製品

 東北で独自の技術やユニークな発想でものづくりを続け、存在感を発揮する企業がある。昨年夏の連載に続き、優れた技を持つ企業を訪ねた。

◎東北ものづくりPart2(4)今井産業(青森県平川市)

 1枚の薄い板が波打っている。接着剤などは使わず、天然の木材をそのまま曲げた。今井公文社長(60)は「木材に含まれる水分だけを使い、乾燥に時間をかけないことがポイント」と種明かしをする。
 木材の板を湾曲させる場合、一般的には煮たり蒸したりして水分を含ませ、繊維を柔らかくして曲げる。しかし、波形のように大きく曲げると、乾燥させる過程の収縮で割れが生じる。
 今井産業(青森県平川市)ではまず、高温の波形ローラー機に板を通し、木材内部の水分を熱して柔らかくしながら曲げる。高温のプレス機で水分を発散させて波形を固定した後、今度は低温のプレス機で冷却する。冷えると空気中の水分を吸収する木材の性質を利用し、発散した水分量を元に戻して割れを防ぐ仕組みだ。
 本業は建築資材の卸売業。データ収集と試作を繰り返し、加工技術が完成したのは2015年10月ごろ。「着想から10年ほどかかったが、世界初の技術を確立できた」と今井社長は胸を張る。
 波形ボードは弘前市の製造工場で生産。軽くて強度が高く、天然木の風合いも備える。材料は製材工程で生じるカバやブナ、ナラなどの端材で、環境負荷も小さい。16年1月、「e.wood+(イーウッドプラス)」のブランド名で本格的に販売を始めると、画期的な新素材としてすぐに注目を集めた。
 生活雑貨大手の東急ハンズ(東京)は波形ボードを薄板で挟んだ「木製段ボール」などを販売。家電メーカーなど十数社とも商品化を検討している。
 うれしい誤算だったのは、波形ボードのデザイン的な評価だ。スウェーデンを拠点に服飾ブランドを世界展開する企業から、店舗の内壁やディスプレーに利用したいと打診があった。
 今井社長は「異業種と協力し、活用の場はこれから広がっていく。環境意識が高い欧州に輸出していきたい」と先を見据える。

●記者のひとこと/「木だと信じない」実感

 紙でできているように見えたが、手にとって質感を確かめて驚いた。「展示会でも最初は誰も木だとは信じない」と担当社員は笑う。木だと分かった時の衝撃は大きく、興味を示す大企業も多い。これからどんな使われ方をしていくのか楽しみだ。(報道部・保科暁史)


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2017年01月12日木曜日


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