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<東北の本棚>出会いの場づくりが鍵

田園回帰(7)地域文化が若者を育てる/佐藤一子 著

 地域文化見直しの視点から、地方再生の道を探る。「民話」を町づくりの柱にする遠野市、「人形劇のまち」を掲げる長野県飯田市、山形県庄内の「食の都」づくりの三つの事例を調査、「鍵は出会いの場づくり」とリポートする。
 民話のふるさと・遠野では「とおの物語の館」を整備した。子どもたちに昔話の採録を宿題に出し、家庭内での伝承に目を向ける。「子ども語り部」も誕生した。昔話教室を開くと盛岡市や釜石市からも参加があり、観光目的ではない地域との交流も生まれた。「昔話を日常生活の中で捉え直そう」とする内発性を引き出した。
 市民創作劇「遠野ファンタジー」の第1回公演は1976年だった。昔話を題材に、スタッフ、キャストなどすべて市民が担う。その土台にはかつての青年団の演劇活動や、郷土芸能に親しんできた農村の文化的風土がある。「ポイントは、社会教育と学校教育が一体となった地域文化と人づくり」という。
 飯田市は江戸時代から人形浄瑠璃が根付く土地。現代の人形フェスタでは「よそ者」をどんどん受け入れ、全国から人を集めている。
 庄内の中核都市・鶴岡市は2014年、食文化部門の「創造都市」としてユネスコの認定を受けた。山菜王国、コメ、130種類に及ぶ庄内浜の地魚がある。山、里、海の食材を、生産から消費までつなぐ「食の理想郷」を目指す。
 例えば魚の行商の女性たちをかつて「浜のアバ」と呼んだが、これが山形県の事業として「浜文化伝道師」に衣替えし、水産物の販路拡大、魚食の普及事業を担っている。食文化の発信の役割を果たしているのが農家レストランの女性たちだ。都会の人たちとの交流から、文化空間の創出に大きく貢献している。
 著者は1944年東京都生まれ。東大名誉教授。都市から農山村へ、田園回帰の戦略シリーズ第7弾。
 農山漁村文化協会03(3585)1141=2376円。


2017年01月15日日曜日


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