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<汚染廃棄物>理解深めて議論冷静に

 東京電力福島第1原発事故に伴う放射性物質で汚染された牧草など、国の基準(1キログラム当たり8000ベクレル)以下の宮城県内の廃棄物問題は、事故から6年近くになっても解決の糸口が見えない。県は昨年末の市町村長会議で一斉焼却への合意を目指したが、先送りを余儀なくされた。事態の打開には、行政の安全対策の強化や説明努力とともに、汚染廃棄物への理解と冷静な議論が必要だ。(報道部・丹野綾子)
 「一斉焼却は現時点で最良の方法と理解するが、目に見えない放射性物質に住民は不安を感じている」(伊藤康志大崎市長)、「安全性は理解してもらえるが、具体的な進め方や期間は示されず、試験焼却に踏み切れる段階に至っていない」(菅原茂気仙沼市長)
 県が示した廃棄物の一斉焼却方針について話し合った昨年12月27日の市町村長会議。住民説明会での反応を理由に慎重姿勢を示す首長が多く、栗原、登米両市長は一斉焼却に同意しなかった。
 国の基準以下の汚染廃棄物は市町村が処理を担わざるを得ないが、多くが手を付けられずにいる。県は昨年11月、市や広域行政事務組合の施設で一斉焼却を進め、灰を最終処分場に埋める方針を提案。村井嘉浩知事は「全市町村の一致」を原則に掲げ、協力を求めた。
 住民団体は「放射性物質を拡散させる」などと反発し、市町村の説明会では焼却炉や処分場周辺の住民から心配の声が噴出。市町村長会議では全員の合意に至らず、当面は堆肥化など焼却以外の方法を検討することになった。
 健康への影響などはっきりしない部分もある中、焼却を懸念する声が出るのは当然だろう。一方、過度に不安がらず、これまでのデータを踏まえて問題と向き合う姿勢が欠かせない。
 東日本大震災では大量のがれきが生じ、県内外で焼却処理された経緯がある。
 石巻市のがれきを受け入れた北九州市で、住民の反対運動が起きた。当時も放射性物質による汚染が不安視されたが、宮城県の記録では県内の仮設処理施設の排ガスや排水からは検出されず、北九州市でも問題はなかった。
 環境省が福島県内で取り組んだ実証実験や仙台市が2015年に実施した焼却処理でも、周辺の空間線量に変化は出ていない。
 現在、宮城県内にある汚染廃棄物の8割超は1000ベクレル以下にとどまる。モニタリングの強化やデータ開示の徹底など、見える形で安全を示すことができれば、現実的な選択肢として試験焼却への理解は深まると思う。
 取材を通じ、住民から「原発の安全神話に漬かった国の言い分は信じられない」「原発事故後の健康調査など宮城県の対応は不十分だ」といった批判を何度も耳にした。ここまで不安、不信を招いた国と事故の当事者の東京電力の責任は重い。県の対応への不満もある。
 不信感の払拭(ふっしょく)は容易でないが、各地で5年以上も汚染廃棄物の一時保管を強いられる農家らの負担を忘れてはならない。今年こそ処理への着実な一歩を踏み出してほしい。

[宮城県内の汚染廃棄物問題]原発事故で生じた汚染廃棄物は、国の基準を超えた指定廃棄物が約3400トン(国の再測定で基準超は1000トンに減少)、基準以下は未指定分を含めて約3万6000トンに上る。指定廃棄物は環境省が県内に最終処分場を整備する計画だが、協議は宙に浮いている。県は約750カ所に一時保管されている基準以下の廃棄物の処理を優先する方針を示している。


2017年01月16日月曜日


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