宮城のニュース

点訳や音訳ニーズ 震災後に倍増

臓器などの位置を図で示す医学関連書を音訳する奉仕員の高橋さん=県視覚障害者情報センター

 宮城県視覚障害者情報センター(仙台市青葉区)で、視覚障害者が身の回りの情報について点字や音声に変換を依頼する件数が、東日本大震災後増えている。多いのは家電の取扱説明書やバスの時刻表など、従来は周囲の人に口頭で説明してもらっていた案件。センターは、視覚障害者が震災を経験し自ら情報を得る重要性を意識し始めたと歓迎する一方で、対応が追い付かない課題に直面する。

<無償で引き受け>
 依頼が増えているのは、同センターの「プライベートサービス」。点訳・音訳をセンターに登録する奉仕員が無償で引き受ける。依頼件数は年100件前後だったが、震災後の2012年度は143件に増加。13年度は221件と倍増し、15年度も259件と伸び続ける。
 依頼内容は、家電の取扱説明書や時刻表のほか、電子マネーの使い方を説明する冊子、趣味の雑誌などさまざま。センター職員の小沢聡さん(38)は「震災を機に積極的に社会参加し、情報交換しようという意識が芽生えた視覚障害者も少なくない」と説明。依頼件数の伸びも「その表れの一つ」とみる。
 同じく職員でサービス利用者である全盲の中村哲(あきら)さん(58)は「以前は家族など身近な人に頼っていた情報を自ら得ようとする意志が出てきた」と指摘。震災時、必要な情報を得ることが健常者以上に困難だった教訓が背景にあるという。

<対応追い付かず>
 点訳・音訳のニーズが高まる一方、対応できる人員は十分ではない。
 現在、奉仕員は50〜70代を中心に約300人。そのうち幅広いニーズの点訳・音訳をこなせる奉仕員は20人ほどに限られる。依頼内容は多様で、作業が半年前後かかるものもある。
 最も時間を要するのが図や写真、グラフなどの説明。例えば、CDラジカセの説明書の場合、点訳・音訳は図のようになる。
 奉仕員はラジカセの構造や操作ボタンの位置を示す図を、まず文章化する。視覚に訴える図や写真に含まれる情報は量が多く複雑。的確で端的な言葉に言い換えるのは容易ではない。
 音訳歴約20年の奉仕員高橋和子さん(58)=泉区=は「作業は常に手探り状態。一日でも早い完成を待つ視覚障害者のため、常に知恵を絞っている」と話す。中村さんは「難易度の高い依頼も多く、奉仕員の技量、創意工夫にかかっている」と語り、時間はかかっても地道に対応する考えだ。

[県視覚障害者情報センター]県内唯一の視覚障害者対象の情報提供施設。県点字図書館が前身。現在、指定管理者の公益財団法人県視覚障害者福祉協会(仙台市宮城野区)が運営する。蔵書は点字図書4万冊、テープの録音図書5万3000巻、CDにデジタル収録されたデイジー図書7000枚。点訳・音訳サービスのほか蔵書の無料貸し出しや奉仕員の養成、情報誌発行などのサービスを提供している。


2017年01月17日火曜日


先頭に戻る