広域のニュース

<河北新報120年>定常型社会に軸足を

ひろい・よしのり 1961年、岡山市生まれ。東大大学院修士課程修了。千葉大教授を経て2016年4月から現職。専門は公共政策・科学哲学。著書に「定常型社会 新しい『豊かさ』の構想」「ポスト資本主義 科学・人間・社会の未来」など。

◎京大こころの未来研究センター教授 広井良典氏

 定常型社会とは、経済成長を絶対目標とせず本当の豊かさを実現する社会を指す。経済の総量は一定だが地域ごとに多様な物差しを持つ分権型社会でもある。
 日本は2011年以降、人口減少局面に入った。この大きな構造変化の中で起きた東日本大震災を機に本当の幸せを考え、ローカル志向に転じた若者も多い。
 「国内総生産(GDP)が増えれば幸せになる」と拡大経済を追求し人、物、財が東京に向かって流れる中央集権化が成長型社会の実相だった。それが今、皮肉な逆説を生んでいる。
 全国で出生率が一番低いのは東京だ。経済成長一辺倒のため、子どもを産み育てるゆとりがない。地方から人を呼び寄せないと経済が成り立たないという成長型社会に特有の矛盾を抱えている。
 競争してGDPを増やす社会には、格差是正のメカニズムもない。過労死するほど長時間労働を強いられる人が多い一方で生活保護受給者や失業者が増え、格差は拡大し続ける。労働時間を減らし、仕事を回し合うことが重要だろう。
 都市と農村の関係にも同じことが言える。都市は地方から食料やエネルギーを安く入手している。持続可能な相互依存とするには農村への再分配が必要だ。
 既に定常型社会に近いのはドイツだ。さほどGDP拡大を唱えず、自然エネルギーの普及は先駆的。地域経済は活発で、目立たないが世界で圧倒的シェアを誇る製品を作り「隠れたチャンピオン」と呼ばれる中小企業も多い。
 地球資源には限界があり、経済はこれ以上大きくなれない。物があふれている社会では、売れない商品を拡大生産しても首を絞めるだけだ。拡大志向から「三方よし」や永続性に軸足を移せない企業は、いずれ淘汰(とうた)されることだろう。


2017年01月17日火曜日


先頭に戻る