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<宮城インバウンド>津波の猛威 世界で共有

津波によって車5台が折り重なる渡り廊下を、息をのんで見つめる見学者=2016年12月3日

 増え続ける訪日外国人旅行者(インバウンド)。地域の元気につなげたいと、宮城県内でも各地で誘致に知恵を絞る。「ぜひ、おらほに」。まちが、ひとが、宝物が、旅行者を待っている。

◎つなぐ震災記憶 気仙沼向洋高旧校舎(宮城県気仙沼市)

<仏編集者が絶句>
 フランスのミシュラン社が発行する旅行案内「ミシュラン・グリーンガイド」。2016年12月に英語とフランス語で公開された東北ウェブ版に、書籍版で未掲載だった観光地31カ所が新たに選ばれた。気仙沼市魚市場や南三陸町、奇跡の一本松(岩手県陸前高田市)など、東日本大震災の被災地が追加されたのが特徴だ。
 選定地は、日本政府観光局などがフランス人編集者に東北地方を取材してもらい、決まった。一行が16年8月に訪れた気仙沼市で興味を示したのが、津波が4階まで押し寄せた気仙沼向洋高の旧校舎だった。
 校舎内に入ると、しばらく絶句したという。床にがれきが散乱し、3階に津波で運ばれた車がひっくり返る。「ここは、5年前のまま残っているのか」「津波はこんなにも高いものが来たのか」。案内した市職員を質問攻めにした。

<見学路を整備へ>
 旧校舎はウェブ版への掲載は見送られたが、日本政府観光局が2月にフランスで配布する東北旅行PR冊子に掲載される予定。市は、津波を伝える「震災遺構」がインバウンド(訪日外国人旅行客)にも通用すると意を強くする。
 復興ツーリズムや防災学習をにらみ、市は国の復興交付金を活用し、気仙沼向洋高の旧校舎内に見学路を整備して2018年度中に公開する。数カ国語の案内文を掲げれば外国人旅行客にも対応は可能だ。

<市民の理解が鍵>
 「津波の恐ろしさにぞっとする貴重な施設」。佐賀市からの応援職員で、昨春から気仙沼市観光課に在籍する井口貴徳さん(36)もその価値を認めながら、課題も指摘する。
 旧校舎はこれまでほぼ未公開で、まだ市民に価値が知られていない。15年に世界文化遺産となった三重津海軍所跡(佐賀市)の登録業務に携わった井口さんは、「世界遺産や震災遺構を後世や外国客に伝えていくには、市民の理解が欠かせない」と言い切る。
 整備を控えた旧校舎は16年12月、初めて一般公開された。定員を上回る136人が見学して「そのまま保存を」という意見が相次ぎ、市は保存範囲を校舎全体に広げる方針に見直した。
 井口さんは「津波防災は世界共通の課題。お客は遠くからでも来てくれる。その価値に気付き、生かしてほしい」と願う。(気仙沼総局・高橋鉄男)


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2017年01月11日水曜日


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