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<双葉町長選>帰属意識 維持に苦労

ダルマみこしが繰り出した「ダルマ市」。全国に避難する福島県双葉町の町民が再会する貴重な場だ=8日、いわき市

 東京電力福島第1原発事故で全町避難している福島県双葉町の町長選が19日、告示される。第1原発が立地し、除染廃棄物の中間貯蔵施設が造られ、帰還困難区域が96%を占める。町民は38都道府県に散る。最も厳しい環境といわれる町の将来は描けるのか。新たな任期4年は町の存続を懸けた最初の正念場となる。(いわき支局・古田耕一)

◎存続を懸けて(下)分散

<「持ち家」過半数>
 福島県双葉町の町民が避難生活を送るいわき市南台の仮設住宅広場で7、8の両日、町に江戸時代から続く「ダルマ市」が開かれた。東京電力福島第1原発事故で38都道府県に散る7000人の町民が今、最も多く集まる場だ。
 巨大ダルマ引き合戦、新調したダルマみこし、太鼓や神楽などの郷土芸能。「久しぶり」。あちこちで町民が再会を喜び合った。
 祭りの後、仮設住宅は静寂に覆われた。かつてほぼ満杯だった250戸は半分以上が空き、住人の大半は高齢者だ。県内計10カ所の仮設住宅の入居率は約30%。住人は400人を切る。
 県内各地の災害公営住宅に入るのは現時点で450〜500人とみられる。「ミニ仮の町」を想定し、2017年度後半の入居開始を目指すいわき市勿来地区の公営住宅は、再募集でも定員に満たない状況だ。
 町民の多くが古里から離れた地で分散する。
 復興庁などが昨年9月に行った住民意向調査では、53.1%が現在の住まいを「持ち家」と答えた。避難先での自宅再建が進む。町民の現住所を、町も完全には把握できない。
 双葉町から約250人が避難する宮城県。町民の自治会「双萩(そうしゅう)会」の事務局長宮本孝男さん(66)は「同じ県、仙台にいても所在が分からない人が多い。特に若い人はそうだ」と話す。
 双萩会の会員は仙台圏を中心に約50人。「8、9割は自宅を構えている」

<町民に合併論も>
 町は昨年12月、23年度ごろに復興拠点で居住を可能とする第2次復興計画を策定した。宮本さんは「具体的目標を見て『俺は帰る』と言う人もいる」と評価しながらも「望郷の念はあるが、早くて6年先というのは微妙。若い人は帰らないだろうし、高齢者も諦め感が強くなる」と語る。
 双葉町は、自治体でありながら「居住空間」を持たない姿が事故から10年以上は続く。町や自治会はタブレット端末で情報を発信したり、交流事業を催すなど結び付きの維持に腐心する。
 いわき明星大の高木竜輔准教授(地域社会学)は「古里意識は、そこでの日常生活で培われる。古里での新たな営みがないと、過去の蓄積が少ない若者から順に帰属意識が薄れていく。帰還困難区域が大半を占める双葉町の難しさが、そこにある」と指摘する。
 町に「戻りたい」13.4%、「戻らない」62.3%。意向調査で戻りたいは前年とほぼ同じで、戻らないが7.3ポイント上昇した。
 南相馬市で昨年秋に開かれた町政懇談会。元町議の男性は「双葉町はどうなるのか。存続させるのは至難の業だ」と話し、周辺自治体との合併を唱えた。
 伊沢史朗町長は「廃町という言葉を聞くこともあるが、帰りたい人がいる以上、町は残すべきだ。確かに事故前の姿を再現するのは困難。コンパクトな新しい街を造る。町の存続は決して諦めない」と述べた。


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2017年01月18日水曜日


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