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<河北文化賞>東北に光 賛辞限りなく

東北の発展に貢献する4個人・3団体の功績をたたえた第66回河北文化賞の贈呈式=仙台市青葉区の仙台国際ホテル

 東北の発展に貢献した個人や団体を顕彰する第66回(2016年度)河北文化賞の贈呈式が17日、仙台市青葉区の仙台国際ホテルであった。受賞した4個人・3団体は一層の研さんを誓い、推挙者らは惜しみない賛辞と今後の活動への期待を寄せた。

 宮城県立こども病院名誉院長の大井龍司氏は東北と世界の小児医療向上に貢献。東北大大学院医学系研究科の仁尾正記教授は「大井氏が確立した胆道閉鎖症の全国登録制度は、研究や治療に活用されて世界最大のデータベースになった」とたたえた。
 漆芸家の沓沢則雄氏は多年にわたり漆工芸を通して東北の芸術文化の向上に寄与。湯沢市の藤井延之副市長は「後継者の指導育成や漆芸産業の振興にも尽力している。今後も独創的な作品を創出してほしい」と期待を寄せた。
 郡山市郡山五中合唱団は全日本合唱コンクールで4年連続の混声・女声2冠。郡山市の吉〓賢介副市長は「顧問教諭と生徒たちの熱意、日々の努力が実を結んだ。東北の音楽文化レベルの高さを全国に発信した」と称賛した。
 リオデジャネイロ五輪のメダリストも受賞した。
 聖ウルスラ学院英智高(仙台市若林区)出身で日本ユニシスの高橋礼華氏、松友美佐紀氏の「タカマツ」ペアはバドミントン女子ダブルスで日本人初の金メダル。聖ウルスラ学院の梶田叡一理事長は「リオ五輪の金で終わらないだろう。東京五輪でも花を咲かせてくれる」と語った。
 ALSOKの太田忍氏はレスリング男子グレコローマンスタイル59キロ級銀メダル。青森県五戸町の三浦正名町長は「人一倍努力すれば五輪に出られるという夢や希望を与えてくれた」と感謝した。
 明成高(青葉区)男子バスケットボール部は全国高校選抜優勝大会で宮城勢初の3連覇。宮城県高体連会長の大沼博之利府高校長は「素晴らしいゲーム展開で快挙を達成した。全国に明成の名をとどろかせた」と喜んだ。
 東北大リサーチプロフェッサー・金属材料研究所教授の牧野彰宏氏はナノ結晶軟磁性合金「NANOMET(ナノメット)」の開発と工業化で東北復興に貢献。伊藤貞嘉東北大理事は「ベンチャー企業を設立して成果を産業に発展させるなど、実学尊重の精神を貫く研究」と意義を強調した。

<審査の経過>

 東北の自治体、国や地方の教育・研究機関、文化団体、体育団体、経済団体に過去の受賞者を加えた約400の団体・個人に学術、芸術、体育、産業、社会活動などの各分野における候補の推挙を依頼。併せて河北新報社、東北放送のネットワークで功績者の発掘に努めた。
 2016年11月2日の締め切りまでに東北6県から32件の推挙があった。分野別内訳は学術6件、芸術8件、体育8件、産業4件、社会活動6件だった。
 推挙された候補は12月7日の審査委員会で各界有識者の意見を参考に具体的な功績、表彰歴、地域性などを総合的に検討。4人、3団体の計7件への授賞を決めた。
 今回の7件を加え、河北文化賞の受賞は374件(277人、107団体)となった。

◎全ての子らに健康を/大井龍司氏(76)=宮城県立こども病院名誉院長

 片手で拍手ができないように、こども病院の開設は私一人が成し遂げた仕事ではありません。恩師の故葛西森夫先生をはじめとする多くの方のご指導、ご支援のたまものです。こども病院の基本理念は「全ての子どもにいのちの輝きを」。地球上の全ての国が平和で、病気の子どもも元気な子どもも共に明るく健やかに育つことが私の願いです。併せて東日本大震災からの真の復興を祈念します。

◎漆通して復興に貢献/沓沢則雄氏(75)=漆芸家

 漆の産地、湯沢市の川連で塗り師だった父親の仕事を継ぎ、もう57年になります。漆は接着性、防腐性に優れた材料です。この漆を使って絵を描くのが夢で、さまざまな作品に挑んできました。現在、漆を通して東日本大震災からの復興に貢献しようと石巻市の雄勝硯(すずり)、原発事故で被災した福島県浪江町の大堀相馬焼の水差しを配した漆箱を作っています。受賞の喜びを糧にさらに精進します。

◎常に高み目指す日々/郡山市郡山五中合唱団 代表・阿部博校長

 合唱団の歌声の魅力は、部員52人による全体の調和だけでなく、伸びやかな男声、女声の響きにあります。中学生であっても限界を設けず、常に高みを目指して厳しい練習を毎日続けてきました。さらに合唱団という集団の中で人間性も育み、多くの可能性を伸ばしています。今回の受賞を含め、合唱を通して得た経験は、子どもたち一人一人の素晴らしい将来につながると信じています。

◎世界で誰よりも練習/太田忍氏(23)=ALSOK

 青森県五戸町出身です。リオ五輪の銀メダル獲得には全然満足していません。2020年の東京五輪では、何が何でも金メダルを獲得したいと思っています。一人の選手として、震災からの復興途上にある東北の皆さんと一緒に歩む思いで頑張ります。自分には「世界で一番練習した選手が、世界で一番になれる」との信念があります。世界で誰よりも練習をして、栄光をつかみます。

◎誇り胸に再び頂点へ/明成高男子バスケットボール部 代表・佐々木稲生校長

 2015年12月、バスケットボールの全国高校選抜優勝大会男子で宮城勢初の3連覇を達成しました。震災復興をテーマにした大会で優勝し、被災地に感動を与えることができたと思っています。05年の創部と歴史は浅いのですが、佐藤久夫コーチの指導で09年に初優勝。今後、部員諸君には3連覇達成の誇りを胸に厳しい練習に立ち向かい、再度全国制覇を目指してほしいと願っています。

◎継続の重要性を実感/牧野彰宏氏(65)=東北大リサーチプロフェッサー・金属材料研究所教授

 幸運な出会いと多くの支援をいただきました。40年近く磁性材料の研究に集中できたのは、妻や家族、友人のおかげです。偶然のように巡り合った新材料「NANOMET(ナノメット)」は国の研究費を受け、大学発のベンチャー企業が実用化にまい進しています。あらためて継続の重要性を感じます。今後も研究開発を通して東北の復興と社会全体の発展に寄与したいと考えています。

◎東京五輪でも金メダル/高橋礼華氏(26)・松友美佐紀氏(24)ペア=日本ユニシス

 聖ウルスラ学院英智高在籍中にペアを組んで以来、多くの方にご指導いただき、リオ五輪で金メダルを獲得することができました。決勝の逆転劇は、仙台をはじめ全国の方々の声援があったからこそです。仙台で過ごした時間がなければ今の私たちはありません。まだ震災の影響が残る東北を元気にするため、次の東京五輪でも金メダルを目指して練習を重ねていきます。(2人のビデオメッセージと葛谷幸司日本ユニシス取締役常務執行役員のあいさつから)

◎記念講演/東北新時代〜観光推進による東北の未来/JR東日本会長・東北観光推進機構会長清野智氏

 最近盛んに「インバウンド(外国人旅行者)」と言われるが、日本を訪れる観光客をもっと増やさなければならない。国内総生産(GDP)に占める観光産業の割合で日本は、世界の水準に達していない。言い換えれば伸びる余地がもっとあるということだ。
 だが、東北のインバウンドの現実は厳しい。2015年の延べ宿泊者数は、全国で大幅に増加する中、東北はようやく東日本大震災前のレベルに戻った状態。特に韓国と香港からの観光客が回復していない。福島第1原発事故の風評被害が残っている。
 課題は何か。一つは東北の誘客活動が一体感に欠けることだろう。各自治体がプロモーションに取り組んでいるが、呼び込むのは自分の所だけ。一緒にPRすれば、例えば松島(宮城県)の次に平泉(岩手県)に行くなど広域の観光ルートを提案できる。点と点を線で結ぶ工夫が欠かせない。
 風評被害の一掃も課題だが、これには特効薬がない。実際の放射線データを示すなど丁寧な情報発信に努めるしかない。津波被災地は震災の教訓を学ぶ場を旅行プランに組み込み、交流の機会を増やしたい。
 仙台空港は昨年7月の民営化で、柔軟な施策展開が期待できる。チャーター便の誘致もいいだろうが、まずは定期便を増やしたい。外国人旅行者に仙台空港まで来てもらい、そこから鉄道やバスで各地につなぐ。
 それには身近な素材がキラーコンテンツになる。会員制交流サイト(SNS)への投稿がきっかけで、大勢の外国人が訪れる人気スポットになったりする。
 東北らしい素材を発掘し、テーマ性のあるコースを設定することが何より重要だ。東北を観光で元気にできるかは、グループ、個人の旅行者をいかに呼び込めるかにかかっている。

[せいの・さとし]仙台市出身。東北大法学部卒。1970年に旧国鉄入社。JR東日本の常務、副社長などを経て2006年に社長就任。12年から会長。15年6月から東北観光推進機構会長。69歳。

[注]〓は「崎」の「大」が「立」


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2017年01月18日水曜日


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