宮城のニュース

前向く被災地伝える 宮城沿岸5年を写真集に

写真集「荒浜」を手にする本郷さん

 東日本大震災で自宅が被災した宮城県多賀城市大代のアマチュア写真家本郷浩(ゆたか)さん(73)が、津波被害を受けた宮城県沿岸を5年余に渡り撮影した写真集「荒浜」を自費出版した。被災者が前を向くきっかけになった写真の力を信じ、仙台市若林区荒浜地区を中心に、被災地と人々の姿を表情豊かに切り取った。
 写真集はB5横判120ページで全てモノクロ。震災翌日の2011年3月12日から16年6月にかけて撮影した、北は気仙沼市から南は宮城県山元町までと、震災前の06〜08年に仙台市や石巻市で撮影した写真計約140枚を掲載する。
 題名には災害危険区域になり人が住めなくなった荒浜の記録と「荒ぶる海の記憶」を残す意味を込めた。
 庭石だけが残った住宅跡、所在なく歩く住民、震災学習の修学旅行生、巨大な防潮堤など、写真は被写体の奥に見え隠れする人々の思いや被災地の今とこれからを想起させる。
 クリーニング店を営む本郷さんの自宅兼店舗には1メートル超の津波が襲来。家財と商売道具、預かっていた衣服が流された。保管していたフィルムも津波をかぶり、現像すると粉雪のような塩の結晶が点々と映り込んだ。「平時の作品にも震災の爪痕が焼き付いている」と考え、そのまま載せた。
 震災当時、運転して逃げた自家用車内に置いていたカメラが唯一手元に残り、無心で写真を撮り始めた本郷さん。その後も撮影し続けるのには理由がある。
 「自分と同じようにつらい体験をした人がいることを知り、気持ちを持ち直すことができた」
 被写体になってくれた東松島市の70代女性が、他地域の本郷さんの写真を見て、そう言った。女性は津波で自宅を流された。避難先でも火災に遭い、辛うじて持ち出した思い出の品全てを失った。それでも自宅を再建し、写真を機に前を向く姿に心を動かされた。
 本郷さんは「前を向く人たちの姿を写真で伝えることが被災者のためになると思った。これからも沿岸の風景と人々を撮影していきたい」と語る。
 本郷さんは日本リアリズム写真集団(JRP)に所属。写真集は2500円。連絡先はJRP出版局03(3355)1461。


関連ページ: 宮城 社会

2017年01月30日月曜日


先頭に戻る