広域のニュース

<CSR>金もうけ超えて社会貢献

 CSR(企業の社会的責任)と聞いて何を思い描くだろう。「営利企業が社会貢献なんて」「大企業の自己満足」と皮肉る人もいる。東日本大震災からの復興で企業が果たした役割は見過ごせない。CSRは社会課題を解決し、世界を変える力を秘める。

◎トモノミクス 被災地と企業/CSR世界を変える

 なぜ今、CSRか。改めて注目されるきっかけは震災だった。東北の被災地には、国内の災害史上、例がないほど多くの企業が復興に携わった。大企業だけではない。地場の中小零細企業は営業の継続や再開で被災者の暮らしを支え、雇用を守った。
 国内のCSRの取り組みは2003年を「元年」として本格化したと言われる。背景には多発する大企業の不祥事と、消費者の企業不信の高まりがあった。メセナやフィランソロピー(社会貢献活動)といった利益還元とは異なる、企業の社会的責任が問われた。
 経団連の15年度社会貢献活動実績調査によると、回答した334社・グループの社会貢献活動の支出総額は1804億円。分野は教育、健康医学・スポーツ、学術研究の順に多かった。CSRの取り組みは大企業を中心に定着している。
 世界の潮流はどうだろう。CSRの源流と言われる欧州では、貧困や犯罪といった社会不安が国家の持続的な成長を妨げるとして、解決の役割を企業に求めた。特に英国はCSR先進国として政府主導で人権擁護、環境保護、地域貢献への取り組みを促す。
 米国には、企業や経営者に社会への利益還元を求める土壌がある。エネルギー大手エンロンの破綻など2000年代初頭の企業不祥事を受け、CSRは社会的信用の指標になった。取り組みの有無が企業評価に直結し、投資にも影響する。
 米ハーバード大のマイケル・ポーター教授は11年、企業の利益と社会課題の解決を同時に実現するCSV(共通価値の創造)という概念を生み出した。
 CSVは売り手、買い手、世間に利益をもたらす「三方よし」の精神に通じる。例えばハイブリッド車の開発は、環境負荷を軽減すると同時に新しい市場を生み出した。本業を生かして社会課題の解決につなげた好例と言われる。
 世界的な人口減社会に入り、企業には自らと、そして経済社会の持続可能性を探る長期的視点が欠かせない。CSRは利益追求だけではない企業の総合力を養う取り組みでもある。

[CSV]Creating Shared Valueの略。「戦略的CSR」とも呼ばれる。本業を通じて社会課題を解決する経営戦略。企業と社会の利益は両立できるという視点を重視し、社会のニーズに応えること自体が企業競争の優位性を高めるという考え方。CSRからCSVに軸足を移す企業も増えている。

[CSR]Corporate Social Responsibilityの略。企業は法を守り、地域や株主、従業員と対話しながら、社会に貢献しなければならないという考え方。環境問題、経済のグローバル化による格差拡大などを受け、1990年代以降、欧米で確立された。国際標準化機構は2010年、社会的責任の国際規格ISO26000を発行した。


2017年01月31日火曜日


先頭に戻る