宮城のニュース

<手腕点検>人脈フル活用 事業推進

農水省の調査団に大崎耕土の魅力を説明する伊藤市長(中央)=1月20日、色麻町の愛宕山公園

◎2017宮城の市町村長(27)大崎市 伊藤康志市長

 「大崎耕土を世界農業遺産に」。大崎市の伊藤康志市長(67)の宿願だ。
 1月20日、農林水産省による大崎耕土の現地調査があった。屋敷林を巡らせた農村風景が眼下に広がる色麻町の愛宕山公園で、伊藤氏は自ら身ぶりを交えて説明した。
 市をはじめ1市4町で構成する協議会が国連食糧農業機関(FAO)に遺産認定を申請するには、農水省の承認が必要だ。調査終了後、伊藤氏は「大崎耕土の歴史や文化に理解を深めてもらえたと思う」と安堵(あんど)した。

<復旧よどみなく>
 2006年4月、県議会議長を辞して1市6町合併に伴う新市の市長選に立候補。三つどもえの激戦を制し、初代市長に就任した。
 以来、県北最大規模の新市民病院、国道108号古川東バイパス、同花渕山バイパスの建設など数々の事業を軌道に乗せてきた。
 市議会議長の経験がある青沼智雄市議(69)は「事業に取り組む馬力に舌を巻く。村井嘉浩知事や県選出国会議員、官僚ら、県議時代から培った人脈が推進力になっている」と語る。
 2期目の11年に東日本大震災、3期目の15年9月には宮城豪雨を経験。「切迫した状況でもユーモアを忘れず復旧方針をよどみなく決断した。腹が据わっている」と元市幹部は評する。
 しかし、世界農業遺産ではつまずいた。14年は農水省の承認を得られず落選している。今回の再挑戦に伊藤氏は「東日本大震災で輸送が途絶した時、食料やエネルギーを豊富に与えてくれる大崎耕土のありがたさを実感した。先人が築いた郷土に国際的なタイトルが欲しい」と意気込む。

<風評招く恐れも>
 実現に向け、大崎地方の住民が心を一つにすべき時に難題が持ち上がった。
 昨年11月、東京電力福島第1原発事故に伴う放射性物質に汚染された廃棄物を巡り県は、国の基準(1キログラム当たり8000ベクレル)以下の汚染稲わらなどを全県一斉に焼却処理する方針を打ち出した。
 「焼却が風評を招き、遺産に認定されても悪影響があるのでは」。市が12月に開催した住民説明会でみどりの農協(美里町)の佐々木陽悦理事(69)が懸念を口にすると、伊藤氏は表情を硬くした。
 元鹿島台町長の鹿野文永氏(81)は「市長職は政治家ではなく、行政のトップと自覚すべきだ」と持論を展開。「住民に奉仕する立場から、または責任の所在を明確化する意味でも、国と東電に処分を求めるのが筋」と主張する。
 農水省の審査は今月下旬に地域代表の最終プレゼンテーションが行われ、3月中に結果が公表される。プレゼンで自らマイクを握る伊藤氏は「汚染廃棄物は大崎耕土のお荷物。焼却で早急に解決し、郷土を次世代にバトンタッチしたい」と信念を曲げない。
 政策実現の場で発揮した馬力に加え、説得力のある言葉が求められる局面が続く。(大崎総局・野村哲郎)


関連ページ: 宮城 政治・行政

2017年02月05日日曜日


先頭に戻る