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<仙台いやすこ歩き>(51)仙台雪菜/肉厚しゃぶしゃぶでも

 寒い朝に、湯気の立ったみそ汁−。おいしい情景の一つだよね。そんな話をしていたら、思い出した。小学生の頃のみそ汁の具ナンバーワンは、雪菜だった。「そう、雪菜のみそ汁、いいよね。そこに油揚げが入ってたら最高」と、画伯も。
 意見が合ったところでお題は決まり、野菜畑を目指したのである。もちろん、お目当ては仙台の伝統野菜の一つである仙台雪菜。向かった先は若林区種次と、土地柄を表すような名前の地だ。
 迎えてくれた相沢直(なおし)さん(64)は、先祖代々の農家さん。何代くらいなんでしょうかと尋ねると、「何代になるのかなぁ、ずっと昔からだよ」とおおらかな笑顔をほころばせる。東日本大震災の前は二木地区と四郎丸地区の有志による「二四クラブ」、そして震災後には「仙印(せんじるし)雪菜組合」を作って、それこそ土地を継ぎ、種を継ぐことに力を注いできた人である。
 「仙台雪菜は、元々は中国のタイサイが原種。江戸時代から、この辺りの六郷一帯や中田地区で主に作られてきて、他の地域にも広がっていったものなんだよ」。そう言うと、相沢さんは自宅から少し離れた畑に車で案内してくれた。
 海から1.5キロのところにある畑。大震災では津波で塩水をかぶったものの、再生した。「一時は、もう農業は続けられないなと思った」と話す。今、盛り上げられた畝には、ぴかぴかと緑葉を輝かせる仙台雪菜たち。それはもう見事なまでにみっしりと生育している。冬で休んでいる田や畑の中でそこだけが青々しているのだ。あ〜ぁ、おいしそう。
 「食べてみろ」。いやすこの心の声が聞こえたのだろうか、相沢さんは雪菜を摘んで差し出してくれた。青々とした葉は肉厚で、茎もシャキシャキ。かめばかむほど甘くてうまい。「くせがないからサラダにしてもいいですね」と画伯。
 すると、相沢さんもまた、とっておきの食べ方を教えてくれる。なんと、しゃぶしゃぶだ。昨年暮れ、若林区日辺の農家レストランでの忘年会で、しゃぶしゃぶ鍋に仙台雪菜も出てきたのだそう。集まった農家の皆さんも初めて口にしたのだが、「うまい」「うまい」の連発だったという。
 うん! これは試さねばと思っていると、またしても心を読んだ相沢さんは雪菜を土から丁寧に抜き、いやすこ2人にたっぷりと手渡してくれた。土の付いた雪菜たちは感触もみずみずしく、生命力がみなぎっているよう。そして、その土の軟らかくて豊かそうなこと、張った根っこもまた細やかなこと。
 相沢さんは大切な土作りに、モミ殻や堆肥を入れ、半年寝かせる。その土に9月になって種をまく。「12月までに成長させておくと、その後の霜や雪といった寒さで甘味を増やしてくるんだよ」
 伝統の種から愛情込めて育てられた仙台雪菜は、今がまさに旬だ。冬の大地の恵み、土地を伝承する人々に感謝して、今夜は仙台雪菜のしゃぶしゃぶをいただこう。

◎寒締め栽培で甘さを凝縮

 伝統野菜の明確な定義はないが、農林水産省によれば「それぞれの土地で古くから作られ、採種を繰り返す中で、その土地の気候風土に合った野菜として確立されてきたもの」。地域の食文化とも深く関わり、地産地消の動きの中で昨今、再び注目されるようになった。
 仙台地域の伝統野菜としては仙台白菜、仙台芭蕉菜、仙台曲がりネギ、仙台雪菜、からとり芋が挙げられる。
 仙台雪菜は越冬野菜で、北国の気候を生かし、あえて寒気にさらす寒締め栽培により、葉肉の厚みや甘さを凝縮させるという。別名「雪の下チヂミ菜」とも呼ばれ、昔から冬場の栄養源だった。
 カルシウム、カリウム、鉄などのミネラルが多く、ビタミンC、カロテンなども豊富で、この季節、風邪など感染症への抵抗力を高める効果が期待できる。
 ちなみに山形県米沢地方の雪菜は、葉を栄養として成長した薹(とう)のある茎葉を食べるよう育てられている野菜で、伝統食のふすべ漬けにされる。
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 土地には、その土地ならではの食があります。自他共に認める「いやすこ(仙台弁で食いしん坊のこと)」コンビ、仙台市在住のコピーライター(愛称「みい」)とイラストレーター(愛称「画伯」)が、仙台の食を求めて東へ、西へ。歩いて出合ったおいしい話をお届けします。


2017年02月06日月曜日


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