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<全町避難>浪江住民懇 民意の把握なおざり

住民懇談会でマイクを手に町民に語る馬場町長=2017年1月31日午後3時ごろ、福島県郡山市

 東京電力福島第1原発事故に伴う避難指示の解除を巡り、福島県浪江町の住民懇談会の在り方に疑問を抱いている。帰還困難区域を除いて政府が提案する「3月31日解除」の最終決定に向けた協議の場であるはずなのに、政府や町は賛否を明確に問い掛けておらず、解除する意義の説明も不十分だ。民意の把握がなおざりのままでは、住民との間に生じる擦れ違いは解消されない。(福島総局・高橋一樹)

 懇談会は政府と町の主催で、1月26日〜今月10日に計10回開催。原発事故の避難自治体で最多の約2万人が全国に分散するため仙台市や東京、大阪も会場となる。
 議論の擦れ違いは、町内で行われた1回目から表面化した。政府は帰還のための生活環境が整ったとする一方で、「帰還を強制するわけではない」「意見を伺って解除を決めたい」などと繰り返した。
 一部住民は「放射線量が十分に下がっていない」「今の状態で帰れというのか」と反発。話し合いではなく「(国の)単なる報告会だ」との声も上がった。
 町が会場で参加者全てを対象に配布しているアンケートにも違和感を覚えた。
 多くの意見をくみ取るのが狙いのはずだが、選択肢は「解除になればすぐに帰りたい」「他市町村に移住を考えている」など。帰町の意向に関する質問のみで、3月31日解除への賛否を答える項目はない。
 馬場有町長は「解除への意見は自由記述欄に書いてもらえる」と言うが、果たしてそうか。積極的に意向を把握しようとする姿勢は浮かび上がってこない。
 「住民の意見をどう知るつもりなのか」。ある男性が懇談会で口にしたように、多くの町民が納得できずにいるのではないか。
 たとえ3月31日に解除されても、住民の帰還は簡単には進まないとみられる。復興庁が昨年11月に公表した意向調査結果では、町に「戻りたい」は約17%。大半が戻らないか、まだ戻れないと考えている。
 だからこそ政府や町が想定する解除の意義を丁寧に説明し、賛否を問い掛けることが必要だと思う。
 町は2012年策定の第1次復興計画で、17年3月の帰還開始を目標に掲げて準備を進めてきた。復興に欠かせない鉄道の運行再開や企業誘致などは、避難指示が解除されて初めて動きだす。「避難区域」であることが町内の事業者の妨げになる恐れもある。
 政府や町はこうした意義を正面から伝えるべきだろう。「解除をスタートに何とか町を残したい」「すぐに帰還できない方の意見も聞かせてほしい」と訴えることが大切ではないか。
 「町が解除後、どんな浪江にしたいと考えているか分からない。私もいずれ帰るが、ただ『帰っていい』と言われるだけでは不安ばかり募る」。町内であった懇談会で、東京の避難先から参加した女性は語った。
 住民の思いにどう応えるのか。懇談会は6、7、10日の3回残されている。

[避難指示解除を巡る住民懇談会]政府は避難指示の解除要件として(1)年間の積算放射線量20ミリシーベルト以下(2)生活インフラや医療などがおおむね復旧(3)自治体や住民との十分な協議−を挙げる。このうち、(3)に対応するのが住民懇談会。政府がこれまで、解除を控える自治体ごとに開催し、除染の進展や生活環境の整備状況を説明してきた。


2017年02月06日月曜日


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