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<いじめ防止>被災の子に配慮を 国指針盛る

 文部科学省のいじめ防止対策協議会(座長・森田洋司鳴門教育大特任教授)は7日、国の基本方針の改定案を大筋で了承した。いじめ防止対策推進法に基づく基本方針を国が改定するのは初めて。東日本大震災で被災した児童生徒に対する配慮を新たに盛り込んだ。
 東京電力福島第1原発事故の避難者に対するいじめが横浜市など全国で相次いで発覚したのを受け、被災者に配慮する必要性を明記することで学校現場に対応を促すのが狙い。
 震災いじめの項目は、基本方針に添付する学校向けの要点に示した。教職員が被災や避難による不安を理解し、いじめの防止や早期発見に取り組むよう求めている。このほか性的少数者への理解促進も加えた。
 協議会は、自殺や不登校など「重大事態」が起きた際の調査に関する指針案も了承した。速やかな実態把握に加え、調査や事案公表に被害者や保護者の意向を反映することを求めた。
 指針案は調査項目などについて被害者側の要望を聞き、経過を随時報告することを明記。自治体の首長などへの結果報告に被害者側の意見を添付できるとした。被害者らが調査を望まない場合も、学校側は「対応の検証を怠ってはならない」と強調した。
 自殺の公表を遺族が望まない場合、ほかの児童生徒にどう伝えるかも示した。事故死や転校との説明は「学校が『うそをつく』と信頼を失いかねない」とし、「急に亡くなったと聞いた」など表現の工夫を求めた。
 文科省は意見公募をした上で、3月に基本方針を改定し、指針を策定する。
 自殺の公表を巡っては仙台市教委が2016年7月、公表の指針策定などを文科省に要望した。泉区館中1年の男子生徒=当時(12)=が14年9月、いじめを苦に自殺した問題で公表が遅れたり、虚偽の説明をしたりした教訓を踏まえた。

[いじめ防止対策推進法]2011年10月、大津市の中2男子がいじめを苦に自殺したのをきっかけに、防止対策を徹底するために与野党の議員立法で制定された法律。国と学校に、いじめ防止対策基本方針の策定を義務付けた。心身や財産への重大な被害や、長期欠席を余儀なくされたりした場合を「重大事態」と定義。学校には文部科学省や自治体への報告が義務付けられており、調査組織を設置して被害者側に適切な情報提供をしなければならない。

◎「国が明示、意義大きい」学校現場は評価

 国のいじめ防止対策の基本方針が東日本大震災で被災した児童生徒に配慮するよう改定されると、学校現場には「震災いじめ」を防ぐ具体的な対応が求められる。各学校が独自に作る基本方針にも反映されることが予想され、教育関係者からは「国が震災いじめを明示した意義は大きい。現場も取り組みやすくなる」と評価する声が上がった。
 自校で「いじめがあると常に疑うことが重要」などとする基本方針を設けている大阪府の小学校校長は「うちにも東北の児童が転校してくる可能性がある。5、6年後でもこの問題が風化しないように、基本方針に明記する必要があるかもしれない」と話す。
 この学校では、高学年で平和教育の一環として、広島の被爆者が差別を受けてきた歴史を学習。校長は「いじめや差別は偏見から生まれる。正しい知識を持つことが今まで以上に必要になる」と力説した。
 神奈川県の小学校校長も「漠然と『未然防止と早期発見』と言われるよりも例示された方が、教員は問題意識を持つことができて足並みがそろう」と話した。
 教育評論家の尾木直樹法政大教授は「タイムリーで具体的な問題に対応するよう国が求めた意義は大きい」と強調する。生徒指導担当の教員が自主的に「原発」などに焦点を当てたいじめ防止策を考えた場合、政治色を嫌う校長ら管理職が難色を示す可能性があるといい、国が模範を示した点を評価している。
 尾木教授は「予防と早期発見が最も重要。本来は現場から動きださなければならないが、国が背中を押してくれた。『うちの学校にもあるかもしれない』と考えて組織的に対応してほしい」と呼び掛けた。
 横浜市教育委員会の伊東裕子健康教育・人権教育担当部長は「横浜市と同様の例が全国各地で相次いだことから改定されたと捉えている。(震災から)5年以上たった今でも丁寧に対応しなければならないと改めて感じた」として、児童生徒らへのケアを徹底していくとした。


2017年02月08日水曜日


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