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<震災遺構>見せると残す どう両立

車5台が折り重なる渡り廊下を視察する市職員ら=1月中旬、気仙沼向洋高旧校舎

 気仙沼向洋高旧校舎(宮城県気仙沼市)の保存を巡っては、校舎内部の公開範囲を巡る議論が再浮上している。市が校舎全体を保存する方針に転換したのがきっかけで、市民の間には公開範囲拡大を求める声がある。市は「見学範囲を広げると遺構の意義が損なわれてしまう」と慎重姿勢を示す。
 「車が折り重なっている場所は、最も津波の脅威を感じることができる。ぜひ見せてほしい」。8日、旧校舎が残る階上地区であった意見交換会で地元住民が公開範囲の拡大を求めた。
 保存する旧校舎は五つの建物からなり、延べ床面積9750平方メートル。市によると、南校舎の1階廊下、3階の一部、4階の一部、屋上を公開する。外階段やエレベーターを整備し、津波で3階に流れこんだ乗用車を間近で見学できる通路も設ける。
 一方で、北校舎や総合実習棟、生徒会館、土台が残る体育館は公開範囲に含めていない。車5台が折り重なり、昨年12月に一般公開した際の参加者アンケートで最も評価が高かった渡り廊下も対象外だ。
 市は今年1月に校舎全体を保存すると表明し、公開範囲については南校舎のままで据え置いた。見学ルートは安全対策を講じるため被災した天井や階段の手すりなど全て直さなければならず、「見学路が広がれば広がるほど災害の爪痕が失われ、本末転倒になりかねない」(市の担当者)という。
 このため北校舎などは外部から見学できるよう、フェンス設置などの安全対策を施す計画。市は「住民や県の意見を聞いて3月に公開範囲を決めたい」と説明する。
 校舎全体を保存する市の方針には、意見交換会の出席者から「維持費がかさんで子孫に負の遺産とならないか」と不安視する声も相次いだ。


2017年02月10日金曜日


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