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<復興庁5年>インフラ偏重否めず

吉原直樹(よしはら・なおき)慶大大学院修了。1991年から2011年まで東北大教授を務めた。現在は大妻女子大教授。日本学術会議で震災復興を問う分科会の委員長を務める。専門は地域社会学。69歳。徳島県出身。

 東日本大震災の被災地再生を担う復興庁は、発足から5年が経過した。「司令塔」の機能やインフラ復旧、生活再建に果たした役割への評価、今後の課題について、吉原直樹東北大名誉教授に聞いた。

◎司令塔 評価と課題(下―2)東北大名誉教授 吉原直樹氏に聞く

 −復興庁は期待された役割を果たしているか。
 「霞が関の中で、位置付けが非常に弱いと感じる。被災者や自治体が何かを要望しても、他の省庁に案件を回されるのが現状だ」
 「特に福島県では顕著といえる。新産業創出を掲げたイノベーション・コースト構想をはじめ、経済産業省が復興のイニシアチブを握っている。原発事故の責任を負う省だが、産業インフラの整備に偏り過ぎていないか。被災者や避難者の生活支援に結び付いているのか疑問がある」

 −復興交付金など被災地には膨大なカネが投入された。
 「津波被災地では防潮堤の建設や高台移転が進んでいるが、海で生業を立ててきた住民の思いや風景が崩されている面がある。津波が時折押し寄せる厳しい自然と折り合いをつけて生きてきたローカルの知恵や技術、減災の思想が継承されなくなってしまう」
 「福島では放射性物質の除染に多額の税金が使われているが、『帰らない』『帰れない』避難者への対策が不十分だ。自主避難者の住宅支援に国が関与していない。帰還政策が中心となる一方で、自己責任の名の下で棄民政策が進められている」

 −日本学術会議の分科会は2014年、復興政策の改善を求める提言をまとめた。反映されているか。
 「国に復興過程を検証する機関の設置を求めたが、答えがない。行き当たりばったりの政策でよいのか。今のままでは、インフラは整うが、形だけの復興で終わってしまう」

 −今後、国が果たすべき役割とは。
 「被災者の個々の実態に即して、生活再建に復興資金を投入すべきだ。避難先で十分な住民サービスを受けられるよう、(古里と避難先との)『二重の住民票』を過渡的にでも認めるべきではないか」
 「被災地に寄り添うという美名で、国が被災地で大規模事業を行うだけでは、原発建設で地域を潤した構造と何ら変わらない。被災地、被災者の自立を促し、市民サイドの政策に進化しなければならない」
(聞き手は報道部・片桐大介)


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2017年02月12日日曜日


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