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<面前DVと児童虐待>心安らぐ場で夢を育む

自分の分と母へのお土産のピザを作る子どもたち。「おいしいって言われるとうれしい」

 親が子どもの前で配偶者に暴力を振るう「面前ドメスティックバイオレンス(DV)」。心理的虐待として認知されるようになり、2016年上半期に警察が児童相談所へ通告した子どもの数は1万1627人と前年同期より6割増えた。愛され、守られるべき家庭の中でDVにさらされた子どもは心に深い傷を負い、加害者から逃れた後も苦しみ続ける。被害から回復し、新たな人生を歩み出すには、どんな支援が必要か。当事者の声を基に考える。(生活文化部・足立裕子)

◎回復への道を考える(4)支援

 「今日はピザを作りま〜す」 スタッフの掛け声で料理教室が始まった。真剣な表情で小麦粉や水の分量を量り、ボウルの中で混ぜ合わせる。小さな手に粘り気のある生地がくっついて悪戦苦闘する子もいれば、手際よく生地をまとめ、年下の子の面倒を見る子もいる。
 ドメスティックバイオレンス(DV)の被害者を支援する特定NPO法人「ハーティ仙台」が、月1回開く「リラ・キッズクラブ」。2014年4月から、DVのある家庭環境で育った子どもたちに東北で唯一、料理や手工芸、ゲームなどを通じた支援プログラムを提供している。

<「合宿楽しい」>
 「昨日はお母さんが仕事だったから、自分で焼きそばを作って食べたんだ」
 「うまくできた?」
 リラックスした雰囲気の中で共に活動しながら、子どもたちとスタッフが学校や家での出来事についておしゃべりする。命や人権について学ぶ時もある。対象は小学生以上で、学校も学年も異なる子どもたちが毎回7、8人参加している。
 2016年の夏休みには大学生ボランティアの手を借りて、勉強会や合宿を行った。男性に対しトラウマ(心的外傷)がある子には女子学生が付くなど、子どもの状況に応じた関わり方を手探りする。10歳男児は「合宿でみんなで布団に入り、夜遅くまで話をしたのが楽しかった」と言う。
 「家庭の事情を口にしなくても、互いに自分と同じような子だと分かっている。一緒に乗り切ろうと結束が強まってきた」と八幡悦子代表。安心できる環境で以前はできなかった楽しく豊かな体験を重ね、自分と人を大切にする関係を育む。
 子どもの回復には、心のよりどころとなる母親が自信を取り戻し、希望を持って生きられるようになることが欠かせない。ハーティ仙台はキッズクラブと並行して、DVから逃れた母親たちの集い「グループリラ」も開いている。

<次につなげる>
 キッズクラブとは別の場所で、手芸や絵手紙、ヨガなどを楽しみ、トラウマや日々の生活で張り詰めた心と体を解きほぐしている。さまざまなテーマで思いを語り、心の整理をする時間もある。
 八幡代表は「人は夢を持つ。できるだけ早く母子を保護して、子どもも母親も適切な支援につなげることが大事だ」と強調する。
 2004年の児童虐待防止法改正でDVを目撃することが心理的虐待だと定められたが、子どものケアは緒に就いたばかりだ。グループリラの活動には公的支援があるが、キッズクラブは民間団体の助成が途切れ、ハーティ仙台はやりくりに苦労している。
 八幡代表は「子どもにこそ支援がいる。NPOが先鞭(せんべん)を付け、効果が確信できれば次につながる。運営は厳しいが継続していかなければならない」と前を向く。


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2017年02月06日月曜日


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