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<面前DVと児童虐待>親子の心理教育 広げて

[しらかわ・みやこ]京都府生まれ。浜松医科大卒。独立行政法人天竜病院精神科医長、浜松市精神保健福祉センター所長などを歴任。米国のNPO「IFCA」と共にトラウマフォーカスト認知行動療法の普及に励む。「こころとからだ・光の花クリニック」(東京)院長。52歳。

 ドメスティックバイオレンス(DV)にさらされた子どもに必要な支援は何か。女性や子どものトラウマ(心的外傷)治療に力を注ぐ、精神科医の白川美也子さんに聞いた。(聞き手は生活文化部・足立裕子)

◎回復の道を考える(5完)精神科医 白川美也子さんに聞く

 −DVは子どもにどんな影響を与えるのか。
<人生に影響大>
 「家でいつ父親が怒るか分からないなど、生活の中で慢性的に不安定な状況にあること自体が子どもにとってはトラウマになる。(1)対人暴力を直接経験しているか、見ている(2)養育者の交代や分離(3)深刻で持続する情緒的虐待−などの阻害要因により、極度のかんしゃくを調節できないなど発達に影響するトラウマ障害が起こる」
 「子ども時代のトラウマは人生に広範な影響を与え、女の子がDVの再被害を受けたり、男の子が母親を見下して加害的になったりする。『トラウマ学習』といって、日々繰り返される考え方や行動パターンを学習し、記憶に刷り込みが起こるためだ。加害性に関しては行動パターンに焦点を当てなければならない」

 −周囲の大人はDVに気付いたら何をすべきか。
 「母親が助けを求められるようにすることが大事だ。支援者につながり、子どもの状況を理解して接することができるようにしなければならない」
 「子どもが安心して話せる場所がない。母子家庭の母親のグループミーティング中に行政が子どもの料理教室を開いたら、生活力が付いて自己有能感を持てるだろう。そこでDVとは何か、心理教育もできるといい。ボランティアが担うなら経済的支援が必要だ。官民協働のモデルができれば津々浦々に広がると思う」
 「性犯罪被害者らさまざまな当事者グループを作って支援してきた中で、一番早く良くなったのがDVを目撃した子どもたちだった。子どもは柔軟性があり、回復する力を持っている」

 −東日本大震災後、岩手県内で子どものトラウマケアに尽力した。
<ケアが予防に>
 「被災地ではDVと子ども虐待が増え、以前から問題のあった家庭の状況が悪化している。だが、支援者への助成が打ち切られている。行政の財政の厳しさは分かるが、トラウマによる被害は繰り返されるので軽視してはいけない。すぐに効果が見えなくても、子どもに適切なケアをすることは、将来起こるDVや虐待の予防につながる」

 −全国に広めようとしている「トラウマフォーカスト認知行動療法」とは?
 「子どもが自分で問題を解決する力と、それを可能にする親子(もしくは支援する大人と子ども)の関係性を、段階的につくっていく治療法だ。親子が一緒に心理教育を受け、リラクセーションや感情の表現と調整ができるよう歩む。世界中で科学的証拠が得られている」
 「2012年から全国で240人が研修を受け、病院や児童相談所で取り入れられ始めている。トラウマをなくすことは誰にでもできる。各地域に世話人がいて、ノウハウを連携しながら共有するネットワークを築きたい」


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2017年02月07日火曜日


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