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<タリウム事件>異例の事前証人尋問

 元名古屋大女子学生の裁判員裁判で、検察側は15日、初公判前に元名大生の妹を証人尋問した様子が写った動画を法廷で流した。廷内で語られた内容を重視する「直接・口頭主義」の徹底を目指す裁判員裁判では極めて異例だ。
 尋問は昨年12月、仙台地裁で行われた。動画は裁判員席のモニターに映し出され、傍聴席には音声だけが流された。犯罪への願望や事件後の感想を聞かされ続けてきた妹は、2時間弱の尋問で元名大生の当時の言動を詳しく述べた。
 刑事訴訟法227条は、証人が公判で供述を翻す恐れがあり、その供述が犯罪の証明に不可欠な場合、初公判前に尋問できると定めている。裁判官が立ち会い、通常の供述調書より証言の信用性は高まる。
 検察側は冒頭、「証人(妹)は以前と異なる供述をする恐れがあるため前倒しした」と手短に説明し、詳しい理由は語らなかった。
 妹は元名大生にナイフを突き付けられたり、殺人事件の際に血で汚れた衣服の洗濯を命じられたりするなど、元名大生の強い影響下にあったことが推察される。尋問の前倒しは未成年の妹に配慮した措置とみられるが、別室に呼んだ妹を中継で結んで尋問する方法などもあり、十分な説明がなかったことに違和感を覚えた。
 裁判員制度をチェックする一般社団法人「裁判員ネット」代表理事の大城聡弁護士(東京)は「見て聞いて分かる、裁判員裁判の理念から一歩遠ざかると言わざるを得ない」と指摘する。
 裁判員は今回、疑問を解消する場を失った。動画再生中、モニターをほとんど見ない裁判員もいた。犯罪を証明する重要性と裁判員不在となるリスクをどう比較衡量するか、より慎重な運用が求められる。(報道部・斉藤隼人)


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2017年02月16日木曜日


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