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<福島 学びやの明日>リスク軽減へ手探り

楢葉中の入学説明会で子どもや保護者に語り掛ける荒木校長=1月28日、いわき市の仮設校舎

 東京電力福島第1原発事故の影響を受けた福島県内の自治体で、小中学校再開に向けた動きが加速している。避難指示の解除は相次ぐが、子どもを取り巻く環境は大きく変化したままだ。地域の学びやを取り戻す道のりは遠く、険しい。事故発生から間もなく6年。教育再生の現状を探った。(福島第1原発事故取材班)

◎原発被災地の行方(中)不安

 福島県楢葉町の楢葉中が今年1月、いわき市の仮設校舎で開いた入学説明会。荒木幸子校長が進学を予定・検討している児童と保護者に呼び掛けた。
 「安全に楽しく過ごせるよう配慮します」「疑問や不安があればいつでも相談してください」
 町は今春、町内で小中学校を再開させる。地域の除染は終わっているとはいえ、父母らの懸念が完全に消えたわけではない。

<理解進む>
 2人の子どもを町内に通わせる40代の男性は「低線量の長期被ばくの前例はない。大丈夫だとは言われているのだが…」と漏らす。
 東京電力福島第1原発事故の被災自治体にとって、学校再開の最初のハードルとなるのは放射線量の問題だ。2012年に本校舎での授業を再開した福島県川内村も、力を注いだのは正確な理解の浸透だった。
 学校敷地はもちろん、課外授業の行き先の空間放射線量も測定して数値を説明した。悩みを抱えた保護者には、専門家が面談して寄り添った。
 村の秋元正教育長は「客観的なデータと細かいケアが肝要だった」と振り返る。今では被ばくへの懸念はほとんど聞かれなくなったという。

<環境激変>
 被災地には放射線量と同等に別の根深い課題も横たわる。原発事故に伴う住民避難で激変した住環境そのものが、保護者の不安をかき立てる。
 昨年7月に避難指示が解除された南相馬市小高区。徐々に人口が戻りつつあるものの、帰還率は2割に満たない。市街地には空き家が目立ち、一帯では家屋解体や補修作業が続く。
 「学校から一歩出れば、不測の事態に対応できないのではないか」。小高区から避難する40代男性が嘆く。区内の小高中に今春から子どもが通学する。市街地に出没するイノシシなど野生動物も気掛かりだ。
 楢葉町から避難する40代女性は3月に戻り、2人の子どもを地元の小中学校に通わせる。「町内は交通量が増え、知らない人も多い」と、新生活への不安をにじませる。
 子どもたちが事故や犯罪に巻き込まれるリスクを軽減しようと、自治体も知恵を絞る。南相馬市は小高区の市街地や市内全校に防犯カメラを設置する。同市のほか楢葉町、福島県浪江町などは学区内外でスクールバス運行を計画する。
 教育現場にとって安全安心の確保は最低限の責務となる。「ただでさえ再開初年度は注目が集まりやすい。万が一のことがあれば今後の進学者数にも響きかねない」。小高中の荒木清隆校長が表情を引き締めた。


2017年02月16日木曜日


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