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<福島 学びやの明日>学習環境拡充に活路

葛尾中で授業をする塾講師は、学力の底上げに一役買っている=福島県三春町の仮設校舎

 東京電力福島第1原発事故の影響を受けた福島県内の自治体で、小中学校再開に向けた動きが加速している。避難指示の解除は相次ぐが、子どもを取り巻く環境は大きく変化したままだ。地域の学びやを取り戻す道のりは遠く、険しい。事故発生から間もなく6年。教育再生の現状を探った。(福島第1原発事故取材班)

◎原発被災地の行方(下)模索

 放課後、帰り支度を終えた生徒が再び席に着く。黒板の前に立つのは学習塾の講師だ。
 福島県葛尾村の葛尾中の仮設校舎は同県三春町にある。週に3、4回のペースで、塾の教材を使った講義が行われる。
 東京電力福島第1原発事故を受け、村がスタートさせた。仮設住宅で暮らす生徒の学習機会の確保が目的だった。自己負担が不要とあって、保護者からの評判は上々という。

<一貫校も>
 葛尾中の生徒は12人。かつての4分の1程度に落ち込み、来春の新入生の数は見通せていない。「葛尾の特色として今後も塾を続けてほしい」。武口隆行校長は危機感をにじませる。
 原発被災地の学校は、少子化と住民離散によって急激な規模縮小にあえぐ。学校の魅力をアピールできなければ、大規模校に流れる動きを止めることはできない。「選ばれる学校づくり」への模索が続く。
 福島県楢葉町は今年6月、民間事業者と連携して小中学生向けの塾を開く。数多くの町民が避難するいわき市で、塾通いしている子どもは少なくない。「帰町したら学力が低下するのではないか」という保護者の不安に配慮した。
 避難区域の活路を小中一貫校に求めるのは福島県川俣町だ。小学5年から英語学習を実施するほか、算数、理科などへの教科担任制の導入を計画する。来春の開校に向け、国や県との協議を加速させている。
 今年3月末に避難指示が解除される同町山木屋地区の小中学生はこの5年間で半減した。神田紀教育長は「将来、都市部から不登校の子どもを受け入れることも検討したい」と明かす。

<定住促す>
 通学者が減れば校内活動の低下は免れない。仲間意識が強まる半面、競争心や社会性が育ちにくいとの指摘もある。より良い学習環境を求める保護者の声は切実さを増す。
 南相馬市小高区の茂木美紀さん(42)は、3人の子どもが同市鹿島区の仮設校舎で学んでいる。今春から小高区内の本校舎に通わせるが、児童生徒数は原発事故前の1割強にとどまる。
 茂木さんは「小規模校の弊害だけが顕在化すれば転出が加速しかねない。徹底した個人指導など、少人数教育のメリットを打ち出してほしい」と願う。
 原発被災地では今後、ロボットや廃炉関連の企業誘致が見込まれる。帰還する住民が限られる中、学校存続には就労者や新規の移住者の取り込みが不可欠だ。
 「学校に魅力があれば子育て世代の流入が進み、定住にもつながるはず」と葛尾中の武口校長は語る。
 学びやを再生する取り組みは、地域の未来を切り開く鍵となる。


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2017年02月17日金曜日


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