宮城のニュース

<仙台いやすこ歩き>(52)甘酒/江戸期以来の健康飲料

 花屋の店先には桃の花。おひなさまといえば、桃と3色のひし餅、そして甘酒だろうか。
 「このところ、夏の甘酒も静かなブームで」「でもやっぱり、寒い季節が似合うような…」と、今回2人が訪れたのは仙台市若林区荒町の「佐藤麹味噌醤油(こうじみそしょうゆ)店」。佐藤光政さん(70)・照江さん(66)ご夫妻が迎えてくれた。
 「あったかいのを、どうぞ」。早速、照江さんが甘酒を出してくださった。麹屋さんが手造りしている甘酒である。まだまだ寒い2月、手にとっぽりと収まる一杯のぬくもりは、何よりのおもてなしだ。
 ストーブの上でやかんが沸騰する音を聞きながら、そっと口元に持っていく。「なんか、ふわーっと花の香りがするようです」と画伯が一言。そう、さらっとして、それでいてほんわかと春の花のような味わいが口の中に広がる。
 熱々ではなく舌に優しい温度がまたいい。「60度で麹菌は死んでしまうので、フレッシュな甘酒を味わってもらいたくて、ぬるめなんですよ」と、照江さんがほほ笑む。この甘さは、信じられないが、米と麹だけから生まれる甘味なのだ。

 荒町は藩制時代、仙台藩祖・伊達政宗が城下町を築いた時に、麹を造る町として生まれたそう。光政さんは何と14代目。1603年の創業というから、414年の歴史を重ねた老舗なのである。「わぁ〜、400年ずっと麹を造ってきているんですね」と感嘆する2人に、「この辺りには麹菌がいっぱいいますよ」と、にこにこと店内を見渡す光政さん。つられて店内を見回してしまう。
 甘酒造りは、まず米麹造りから。政宗公の時代から変わらぬ造り方で、蒸したお米に麹菌をかけて3日間発酵させる。「麹菌が働いてくれるんです」。光政さんは、麹菌が好む50〜55度の温度を保持しながら見守るのだという。「愛情がないと駄目なんですよ」と、そばで照江さんが教えてくれる。
 その愛情に応えて出来た米麹を、蒸した米に混ぜ、さらに12〜16時間発酵させて造られるのが甘酒。だからこんなにも優しいんだと、また器ごと手のひらで包み味わう。お話を聞くにつけ、やっぱり、甘酒は女の子の健やかな成長を願うひなの節句にふさわしい、と思う。

 同店では年間通して、仙台味噌と醤油を手造りし販売している。店先に並べられたつやつやと光る仙台味噌は量り売りもあり、ご近所の人が次々にやって来ては買い求める。甘酒は10月から4月までの期間限定商品。寒い季節は空気に雑菌が少ないので、いい甘酒ができるそうだ。昔から愛宕神社(太白区)の初詣に、また商店街の初売りにも、甘酒が用いられてきた。
 無添加だから子どもからお年寄りまで楽しめる、400年伝統のノンアルコール飲料。寒い冬の栄養ドリンクとしても人気で、お年寄りのためにと求めていく人も多いという。
 「そうか、私も父に買っていこう」「そう、私も母と飲もう」と、すてきな口実とともにおいしい伝統の一瓶をしっかりと抱いて店を出るいやすこ。体も心も、なんかぽかぽかだ。

◎かつて60軒の麹屋連なる

 1601(慶長6)年に建設が始まった仙台藩の城下町。その中心部は商人の町である大町、柳町、立町、肴町、荒町、南町の6町が占め、荒町には麹屋が軒を連ねた。28年に政宗公が隠居所として若林城を築いた際、荒町は現在地に移り、城下にある麹屋は全てここに集められた。明治時代、荒町には60軒の麹屋があった。
 麹の歴史は紀元前にさかのぼり、麹を用いる技術は、一説には弥生時代、米作りとともに中国から伝わったとされる。麹の働きにより造られる味噌、醤油、酒、みりんなどが、日本の食文化の一翼を担ってきた。
 2006年、日本醸造学会は、麹菌を古来大切に育み使ってきた貴重な財産として「国菌」に認定している。
 昔から、滋養のある飲み物として重宝されてきた甘酒は、消化酵素やビタミンB群が豊富で、病後の体力回復によいとされる。また、麹に由来する食物繊維とオリゴ糖が腸内環境を整え、コウジ酸の美肌効果も期待できる。


 土地には、その土地ならではの食があります。自他共に認める「いやすこ(仙台弁で食いしん坊のこと)」コンビ、仙台市在住のコピーライター(愛称「みい」)とイラストレーター(愛称「画伯」)が、仙台の食を求めて東へ、西へ。歩いて出合ったおいしい話をお届けします。


2017年02月20日月曜日


先頭に戻る