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<回顧3.11証言>法的取り締まりに限界

 東日本大震災の津波で、宮城県沿岸部の工場や倉庫から鉄や銅などが入った製品、資材が大量に流された。水が引いた後には、高値で売れる金属が所有者不明の「漂流物」として散乱。復旧への第一歩となるがれき撤去作業の傍らで、金属だけを狙う不審な人々がうごめいていた。

◎被災地荒らし横行(下)

 2011年4月下旬から5月下旬にかけ、仙台市内の金属買い取り業者の店頭には、金属を持ち込む客がひっきりなしに訪れ、長い行列ができた。
 買い取り店のにぎわいは、東日本大震災の被災地のがれきから金属を持ち去る人々が多く目撃されていた時期とほぼ重なる。
 自らが所有していた金属を売りに来た客もいたが、明らかに不審な客も少なくなかった。ある経営者男性は振り返る。
 「送電線を持参した男がいた。所有者は電力会社なので、身分証明書の提示を求めたところ、男は立ち去った」
 宮城県警も金属を持ち去った集団や個人を把握しており、窃盗事件として捜査。気仙沼署は6月、がれきから鉄製のレールを盗んだ疑いで、宮城県栗原市の運送業者の男を逮捕した。レールの所有者はJRであることが明白であり、窃盗罪が適用できた。だが、これは極めてまれなケースだ。
 窃盗罪は所有権を侵す罪であり、所有者の特定と被害の裏付けが欠かせない。あるベテラン捜査員は「がれきの金属は、どこから流れたものなのか分からず、所有者の特定ができない。窃盗罪での立件は非常に難しい」と嘆く。
 津波で流された所有者不明のがれきを持ち去る行為は窃盗罪ではなく、漂流物横領罪に当たる。県警は仙台港周辺だけで、10件前後の金属持ち去りを確認していた。不審者はいずれも漂流物横領容疑で、取り調べを受けた。
 漂流物横領罪の法定刑は1年以下の懲役または10万円以下の罰金、科料にとどまる。同罪の根底には、浜辺に流れ着いた漂流物はごみ同然の価値しかないという概念がある。津波で価値の高いものが流されるケースは想定されていない。
 金属窃盗は大掛かりな犯罪グループによる犯行が多いとされる。これに対し、被災地で目撃された集団は違ったタイプとみられる。仙台市内のリサイクル業者の男性はこう推測する。
 「買い取り業者で換金しており、独自の裏ルートで金属をさばく窃盗組織ではない。金属が金になると知った者が、重機を動かせる仲間を集めて急造した集団だ」
 県警幹部は「パトロールを強化していて、露骨な持ち去りは最近、少なくなっている」と話している。 =2011年7月8日河北新報
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 2011年3月11日の東日本大震災発生以来、河北新報社は、被災地東北の新聞社として多くの記事を伝えてきた。
 とりわけ震災が起きた年は、記者は混乱が続く中で情報をかき集め、災害の実相を明らかにするとともに、被害や避難対応などの検証を重ねた。
 中には、全容把握が難しかったり、対応の是非を考えあぐねたりしたテーマにもぶつかった。
 6年の節目に際し、被災者の「証言」を集めた一連の記事をあえて当時のままの形でまとめた。記事を読み返し、あの日に思いを致すことは、復興の歩みを促し、いまとこれからを生きる大きな助けとなるだろう。


2017年02月22日水曜日


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