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<福島除染>バブル消えても残る作業員

アパートが見つからず、寝泊まりしていたネットカフェに帰る工藤さん=1月中旬、福島市

 東京電力福島第1原発事故に伴う福島県内の主な除染事業が帰還困難区域を除き、本年度でほぼ終了する。2兆円を超える予算が投じられ、従事者は最大3万5000人に上った。「除染バブル」は消えてもなお、同区域などに残る高賃金の仕事を求める人がいる。作業員の男性を取材した。

<月収40万円超も>
 大阪市出身の除染作業員工藤成人さん(62)は2月に入り、福島市のネットカフェで寝泊まりする生活を抜け出した。双葉町で働き口が見つかり、従業員寮で暮らせるようになった。
 昨年11月に前の会社との契約が切れて退寮。アパートを探したが、全て断られた。「『除染やってます』言うたら貸してくれへん。ほんま難民やった」
 経営していた飲食店を10年ほど前に畳んだ後、大阪で土木作業員をしていた。原発事故翌年の2012年春に福島県に来て、飯舘村や南相馬市などの避難区域で除染に携わってきた。
 避難区域の作業には1日最大1万円の危険手当が付く。日当は高ければ1万8000円。月収に換算するとおおむね30万円で、時には40万円を超えた。一般的な土木作業の倍近かった。

<給料未払い経験>
 特殊な技術や多額の設備投資が要らない除染事業は、受注企業にもうまみがあった。1次下請けだった北関東の企業幹部は「元請けから支払われる金の約4割が利益になった」と証言する。
 多種多様な企業が県内外から参入し、賃金の未払いやずさんな安全管理などが横行した。
 「ピンハネはまだましな方。給料未払いのまま社長に行方をくらまされたこともある」と工藤さん。手抜き除染をした業者の尻拭いをさせられた経験もある。

<住民に気を配り>
 作業員が関係する刑事事件が多発し、社会問題になった。全身に入れ墨をしていたり、小指がなかったりする人たちと一緒に寮の風呂に入ったときは「刑務所に来たかと錯覚した」。
 作業員の多くは真面目だ。工藤さんも地元住民に気を配ってきたと思っている。コンビニに入るときは長靴を履き替え、汚れた作業着を脱いだ。
 だが、除染バブルは急速にしぼんだ。工藤さんのネットカフェ暮らしは3カ月近くに上った。
 それでも大阪に戻らなかったのは、別れた妻に高校生の子どもの養育費として月15万円を支払うため。新たに除染作業員として働く双葉町は、帰還困難区域が町内の大半を占める。
 「賃金の高い除染の仕事を経験したら元の仕事には戻りにくい。そういう人は多いんとちゃうんか」(福島総局・藤井宏匡)


2017年02月24日金曜日


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