山形のニュース

山村の営み聞き記す 元協力隊員が民俗誌

大鳥地区の民俗誌を書き上げた田口さん

 地域おこし協力隊員として鶴岡市大鳥(おおとり)地区に赴任し、任期終了後に定住した田口比呂貴さん(30)が、民俗誌「大鳥の輪郭」を出版し、版を重ねている。狩猟体験や住民の話を基に、消滅の可能性すらある山村の文化と歴史を1冊にまとめた。田口さんは「ノスタルジックに描かれた田舎とは違う山村の合理的な暮らしを知ってほしい」と話す。

 大阪府で育った田口さんは脱サラし、2013年に隊員として大鳥に移り住んだ。お年寄りたちと触れ合う中で「元気なうちに地域に脈々と伝わる習慣や生活の知恵を後世に残さないといけない」と思い立ち、編集に乗り出した。
 現代のような行政サービスがない時代に暮らしを安定させるため、水や森林の管理など住民が共同で取り組んだ集落の営み、冠婚葬祭のしきたり、方言などを、住民30人以上から聞き取り、項目別に整理した。
 地区で盛んな熊狩りに10ページを割いた。マタギ見習いでもある田口さんの体験ルポ、マタギの服装や狩猟方法を写真やイラストを付けて掲載。「妊娠中の妻を持つ人は猟に参加できない」といった禁忌行為にも触れる。
 大鳥は新潟県境に近い朝日連峰北端の山間部にある集落。昭和後期に伝説の大魚タキタロウで一躍有名になった。人口はここ60年で約1300から80ほどに減り、高齢化率は7割を超える。
 田口さんは当初、インタビュー集を考えていたが、マタギ文化などを調べるうちに民俗学に傾倒。旧朝日村史や方言集、治水関連書籍などの資料を読み込み、武士らの隠れ里として誕生した鎌倉期の言い伝えまでさかのぼった民俗誌に仕上げた。
 昨年8月に200部を発行。県内外から引き合いがあり、同年10月に50部、今年1月に50部を増刷した。
 田口さんは昨春、協力隊を卒業。現在は山小屋の管理や土建業の手伝いで生計を立てる。「見てくれを重視しがちな都会にはない自然と共生し、人間の営みの本質をとらえた暮らしが大鳥にはある。これからも記録し続けたい」と語った。
 A4判、フルカラー60ページ。送料込み1560円。連絡先は田口さん090(7757)7491。


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2017年02月25日土曜日


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