岩手のニュース

<台風10号半年>自宅復旧道のり遠く

土砂の流入で破壊され、まだ修理していない自宅内部を見る畠山さん=2月、岩手県岩泉町

 岩手県沿岸を襲った台風10号豪雨から28日で半年となる。県内で21人が死亡、2人が行方不明となった災害の爪痕は、被害が甚大だった岩泉町を中心にいまだ深く残る。濁流の余波に苦悩する被災地の今を見た。(盛岡総局・横山勲、斎藤雄一、宮古支局・高木大毅)

◎濁流の余波(中)生活再建

 壁の修理がまだ終わらない。手付かずの所から冷たい風が吹き込む。
 「岩泉の冬は長い。何とか乗り切って、住めるようにしたい」
 岩手県岩泉町浅内の山間部にある大沢地区。大工の畠山政一さん(63)は、昨年8月の台風10号豪雨で土砂が流れ込み全壊した家を自ら修理する。
 昨年11月にようやく停電が解消され、避難所から戻った。母、弟と3人家族。地区の集会所で寝泊まりを続ける。家の修理が終わるのは夏ごろの見通しだ。
 「国や町の生活再建支援金が出るまでは壁の石こうボードや断熱材など材料費は持ち出しで、やりくりに困っている。町からの連絡も少なく、ここの被害が忘れられたのでは、と思うことがある」
 畠山さんは長期化する復旧の道のりに、不安をにじませる。

<隠れた「避難者」>
 岩泉町では川の氾濫や土砂崩れで971戸の住宅が被災し、うち447戸が全壊した。被害は東日本大震災を上回る。
 昨年12月には仮設住宅223戸の整備が済み、195世帯382人が入居。最大で8カ所に677人が身を寄せた指定避難所は解消した。ただ、未修理の住宅で暮らす被災者は少なくとも254世帯548人に上る。統計には表れづらい隠れた「避難者」だ。
 「われながら、すごい生活をしていますよね」。岩泉向町のパート小笠原弘子さん(53)は苦笑いする。全壊した自宅の2階で夫と2人で生活する。
 仮設住宅に入ることもできたが、災害救助法に基づく応急修理費は支給されない。少しでも費用を確保しようと、自宅での生活を選んだ。今後支給される生活再建支援金で再建を図る。
 業者に頼んで修理できたのは窓と雨どい程度。1階の床は土がまだ見える。食事はカセットコンロで作る。入浴と洗濯はできない。
 小笠原さんは「避難所はプライバシーがなく、疲れたので出た。仮設住宅ができても、みんながみんな生活を再建できているわけじゃない」とこぼす。

<河川改修が壁に>
 皮肉なことに、県が急ピッチで進める大規模な河川改修計画が生活再建の壁となるケースもある。計画で住宅約100戸が移転を余儀なくされる見込みだが、詳細な影響範囲が示されるのは4月以降となる。
 岩泉向町の農業遠藤忠裕さん(59)は、清水(しず)川そばの自宅が全壊して仮設住宅に入った。将来は元の場所に自宅を再建すると決めたが、表情はさえない。
 「敷地の一部が影響を受けそうで、詳細が明らかにならないと再建しようにも身動きがとれない。改修は必要なことだけどね」
 県内で21人が死亡し、2人の行方が分からない豪雨災害から半年。1月に町などと生活再建の相談窓口を設けたNPO法人フードバンク岩手の阿部知幸事務局長(42)は「被災者が選ぶ生活再建の形は、仮設住宅や災害公営住宅に入ること以外にもたくさんある。個別ケースに対応した支援が必要だ。それができなければ震災の教訓が生かせたとは言えない」と強調する。


関連ページ: 岩手 社会

2017年03月01日水曜日


先頭に戻る