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<震災6年 まち再生>居住見込み半減衝撃

電柱が立ち並ぶ「町方」区域。中心市街地の再生は正念場を迎える=岩手県大槌町

 東日本大震災の津波被害を受けた岩手、宮城、福島の被災3県の沿岸部は、まち再生の取り組みが正念場を迎えている。中心市街地を造り直す大規模な土地区画整理事業は道半ば。現地再建への戸惑い、廃業の危機、地域格差など課題は山積する。震災から6年を迎える被災地の今を追う。

◎正念場迎える被災地(1)岩手県大槌町

 待望の住宅再建も手放しで喜べない。
 被災した岩手県大槌町の鍼灸師(しんきゅうし)赤崎幾哉さん(75)は2月10日、土地区画整理事業が進む「町方」区域の一角で地鎮祭を開いた。
 長い仮設住宅暮らしを経て、鍼灸院を兼ねた自宅の建設が始まる。ただ、周囲は空き地となる見通しだ。
 「町方」は町が中心市街地に位置付ける。昨年、公共施設や災害公営住宅に加え、地権者調査などで判明した住宅の再建場所を「見える化」した地図を初めて作成した。

<完工待てず>
 目立ったのは、未利用地を示す白地。150億円以上を投じる区域30ヘクタールの実像に波紋が広がった。震災前に約4000だった人口は1135を想定。計画2100の約半分にとどまる。
 赤崎さんは「何で戻って来ないのかなと思うが、個人の事情だから仕方ない」。自分に言い聞かせるように話す。「やはり時間がかかりすぎた」
 区域の一部で土地の引き渡しが始まったのは、震災から5年近くがたった2016年2月。平均2.2メートルの盛り土を伴う事業は資材や人手の不足で難航し、完工を待てない被災者の「流出」を招いた。
 町シルバー人材センター理事長の阿部恵一さん(72)もその一人だ。13年9月、かつての自宅から約3.5キロ内陸に新居を構えた。
 避難先の盛岡市からセンターの立て直しと業務受注のため週2、3回通う生活が続いた。片道2時間以上の運転はきつい。早く家を建てて落ち着きたかった。
 阿部さんは「若ければ待ったかもしれないが、せっかく新築するのだから、元気に運転や庭の手入れをできるうちに入居したいと思った」と明かす。

<補助に異論>
 高齢化や工事費高騰、津波で浸水した場所への不安…。さまざまな理由で、多くの被災者が区域外での住宅再建や災害公営住宅を選んだ。
 空き地解消のため、町は土地区画整理事業地での住宅建設に100万円を補助する制度を新設する。
 新年度当初予算案に関連費2億円を計上したが、町議会からは「区域外の人にとって不公平だ」「効果が疑問」と異論が噴出。3月定例会は不透明感が増す。
 町方の土地の全面利用開始は来年1月。厳しい現実に直面しながらも前に進む動きがある。
 町方の大槌末広町商店会は、春以降に再建する19店を紹介するちらしを作り、配布した。8月に震災以来途絶えていた夏祭りを復活させることも宣言した。
 商店会理事長で大槌商工会長も務める菊池良一さん(68)は「人口減で商売が大変になるのは分かっているが、まちをもう一度つくり直さなければいけない。『頑張って店を復活させるよ、みんなも戻ってきて』というメッセージを発信したい」と決意を語る。
 中心市街地の再生は、不安と覚悟が入り交じる。
(釜石支局・東野滋)


2017年03月03日金曜日


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