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<仙台いやすこ歩き>(53)仙台ゆべし/店独特の硬さ具合保つ

 このところ、「あれが食べたいのよ」という電話が続いた。画伯とのいやすこ話も「仙台のゆべしって独特で、あの食感は札幌や京都にはないらしいよ」「えー、そうなんだ」となった。知らないことはまだまだ。いやすこ道中真っただ中の2人は、ゆべし作りの現場へと出掛けることに−。
 仙台市宮城野区小田原にある「仙台駄がし本舗 日立家」。落ち着いたたたずまいの店の中に、あったあった、「仙台銘菓」と銘打ったゆべしのクルミ入りとゴマ入り。他にも仙台駄菓子、季節の和菓子、仙台飴(あめ)、太白飴、ニッキ飴と並び、目が春の心のように浮かれてくる。
 迎えてくださったのは専務の森康仁さん(33)。創業の年を伺うと、「実は昭和13(1938)年とずっと言ってきたのですが、最近、昭和10年の台帳が出てきたんです」と笑う。それなら少なくとも82年は続く老舗だ。康仁さんのおじいさんが「森飴店」の名で飴屋を開いたのが始まりで、今はお母さんが3代目を継いでいるのだそうだ。

 お店の裏にある工場に案内していただく。年季の入った道具や設備はきれいに磨き上げられ、熟練の職人さんも若い職人さんも、皆さんきびきびと働く姿は見ていて気持ちがいい。康仁さんのおじさんで、この道50年という森俊二工場長(67)を中心に、数人がゆべしの生地作りの最中だった。
 アルミボウルに入れた材料がぐつぐつと沸騰し、おいしそうな香りが漂う。もう、あのゆべしの香りだ! そこにもち粉、クルミを入れて、かき混ぜては休み、またかき混ぜる。「こうすると、もち粉に水分がしっかりと染みていくんですよ」と俊二さん。
 混ざったところで素早く木枠に流し込み、大きな蒸し器へ。1時間半蒸して、1晩冷ますのだそうだ。別の調理台では昨日蒸されたゆべしを切り分け、もち粉をまぶしていた。それを隣の部屋で丁寧に個包装。いったい何人の手の技を経て、仙台ゆべしは出来上がるのだろう。

 蒸し器の1段は80個で10段あるから、1日800個ほど作るそうだ。材料はできる限り仙台産、東北産のものを使う。そして「うちのゆべしはちょっと柔らかいんです」と、俊二さんは話す。店独特の硬さ具合を保つために、季節で仕込みが違ってくるのだという。
 「伝統を守ること、そして同時にとらわれ過ぎないことも大切だと思っています。20年ほど前には甘さを控えめにしたり、一度もっと柔らかさを増したりしたこともあったのですが、元に落ち着きました」と康仁さん。
 試行錯誤の積み重ねが伝統になっていくのだなぁと考えながら、思わず「あのカットした端っこ、頂けませんか」と言ってしまった! 快く渡してくださった出来たてのゆべしに、ただただニコニコ。ふにふにの歯応え、クルミの香ばしさ、ああ、このゆべしのあるまちにいてよかったと、ありがたさをかみしめる。
 遠くでふるさとの味を待っている人たちに、また送ろう。もちろん、わが家で味わう分も。と、しっかりとお土産を手に、帰路に就くいやすこであった。

◎ユズ入手困難クルミ使う

 ゆべしは、平安時代後期に生まれたと伝えられる。漢字では「柚餅子」と書く。本来はユズの実を丁寧にくりぬいて、中にもち粉とみそ、砂糖などを合わせた生地を詰めて蒸したもので、香り高い携帯食、兵糧食として重宝されたという。
 仙台ゆべしは1603(慶長8)年、仙台開府以来の銘菓といわれる。東北地方ではユズが手に入りにくかったため、その代わりに身近にあったクルミが用いられた。「丸ゆべし」と、すだれでのした「平ゆべし」があり、時代とともに変化してきた。
 現在では、全国各地に形も味もさまざまなゆべしがあり、製造法もそれぞれに違っている。
 仙台ゆべしと同じような材料と製造法で作られるゆべしは、東北から北関東にかけて各地域にあり、名産となっている。
 四角い形のほか、ゆべし生地にあんや蜜を包んだ三角形のまんじゅう型、小判型、また、みそ風味のみそゆべしもある。

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 土地には、その土地ならではの食があります。自他共に認める「いやすこ(仙台弁で食いしん坊のこと)」コンビ、仙台市在住のコピーライター(愛称「みい」)とイラストレーター(愛称「画伯」)が、仙台の食を求めて東へ、西へ。歩いて出合ったおいしい話をお届けします。


2017年03月06日月曜日


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