福島のニュース

<あなたに伝えたい>家業再開 思い引き継ぐ

いわき市の自宅で宰さんの形見となったカメラを眺める良一さん

 村井宰(つかさ)さん=当時(89)=は、長男の良一さん(65)、洋子さん(60)夫婦と福島県富岡町夜の森地区の自宅で暮らしていた。東京電力福島第1原発事故の避難生活で体調を崩し、2011年11月23日、呼吸器不全で亡くなった。翌12年、震災関連死に認定された。

◎七回忌に寄せて(7)村井良一さん(福島県いわき市)から宰さんへ

 良一さん 原発事故から6年。おやじが亡くなってから、もう5年余りになります。
 おやじが新聞販売、不動産を手掛ける店の仕事を引退したのは、心臓病を患うなどした震災の数年前。その後、おふくろを亡くしてからは旅行や読書など趣味に打ち込み、自宅の離れで1人の時間を過ごしていたね。数々のカメラは大切に保管しています。
 真面目で、盆栽の水やりを欠かさない。事業の一つを巡り、一度だけ言い争ったことも。それでも「好きなことをやれ」と私を見守ってくれました。
 みんなで慌てて車で避難したのは、原発事故翌日の朝。会津若松市の旅館、アパート、いわき市のアパートなどを転々としました。
 食欲が衰え、いわき市に移るまでに、2度倒れたおやじ。文句は口にしなかったけど、ストレスがたまったのかもしれません。
 亡くなる1週間前、「俺の葬式はどうするんだ」と妻に尋ねたと聞きました。私と妻が富岡町の様子を見に出掛ける日、ショートステイに行くのを嫌がるおやじに「我慢してね」と言ったのが最後の会話でした。
 古里の墓地に納骨できたのは14年5月。本当は戻りたかった古里で最期を迎えられず、さぞかし残念だったろうに。
 14年2月、いわき市に新居を建てたよ。帰還困難区域で帰れる見通しの立たない夜の森への思いに一区切り付けたつもりです。
 夜の森の家と同じように、新居には火鉢を置いています。保管しているカメラを見ると、孫にレンズを向けていたおやじの姿が浮かんできます。
 いわき市内で不動産業を再開しました。先祖が200年前に北陸から移り、100年前に祖父が夜の森で商売を始めたように、「一旗揚げてやる」。先祖の思いを新天地で引き継ぐ姿を、見ていてほしいです。


2017年03月07日火曜日


先頭に戻る