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<震災6年 まち再生>土地区画整理 現状と溝

土地区画整理事業が行われている岩手県陸前高田市の高田地区。膨大な空き地の発生が懸念される

 東日本大震災から6年となる津波被災地で「まち再生」が難航する。土地区画整理事業を進める市町村は工事の長期化で人口が流出し、広大な空き地が生じかねない状況だ。国は市町村に実態把握を促す。東北沿岸のまち再生は区画整理の制度の枠内でかなうのか。既存制度と現実のギャップを埋める新たな手法が求められている。(報道部・菊池春子)

<計画下回る>
 国土交通省によると、岩手、宮城、福島3県の沿岸21市町村の計64地区で区画整理事業が行われている。災害危険区域を除き、住居の再建を見込むが、区域に戻る住民が、計画人口を大幅に下回る実態が明らかになりつつある。
 地権者への意向調査を行った岩手県大槌町と陸前高田市では、土地利用の予定がある割合が50%程度と推測される。大槌町は土地利用を促す「空き地バンク」事業などで対策を急ぐ。意向把握が進んでいない市町村もあり、他の区域でも多くの空き地を抱える恐れが出始めた。
 区画整理は、市街地の道路や公園、公共施設用地などを一体的に整備し、土地の利用価値を高める都市計画の手法だ。戦災復興や鉄道沿線の宅地整備などで広く活用されてきた。経済が右肩上がりの時代の発想で、基本的に「土地を利用したい人がいる」ことを前提に成り立ってきた。
 経済状況が低迷する中で起きた震災の被災地では、土地の価値は上がりにくく、住民の流出も相次ぐ。首長からは「被災地の実情を踏まえた新たな手法が必要だ」(戸羽太陸前高田市長)などの声が上がる。
 国交省市街地整備課は「事業の途中であり、まずは実態把握が必要」との認識を示す。「地権者の意向を確認して対応策を検討するよう市町村に助言していく」と説明する。

<「阪神」でも>
 一方、土地利用が進んでも、コミュニティー維持の課題はなお残る、と指摘するのは神戸市のNPO法人まち・コミュニケーションの宮定章代表理事。
 阪神大震災後、区画整理が行われた神戸市の市街地でコミュニティーづくりを今も支援するが、「何でこんな町をつくったんだという声は根強い」と話す。工事の長期化で住民は離散。新住民が流入したが、地域のつながりは失われ、自治会活動などに支障が出ているという。
 宮定代表理事は「人が入れ替われば、商業者も事業形態をニーズに合わせるなどの努力が要る。単に人口が戻ればいいという話ではない」と指摘。「国は区画整理の限界と影響を把握し、住民の立場で検証する必要がある」と強調する。

[土地区画整理事業]市街地の安全性や利便性向上のため、区画を整え利用増進を図る事業。主に(1)事業計画決定(2)審議会設置(3)将来の土地の位置や範囲を示す仮換地指定(4)工事(5)換地処分(6)土地・建物の登記−の流れ。地権者が少しずつ土地を出し合う「減歩」を伴う。被災地では土地のかさ上げを伴うケースもある。


2017年03月08日水曜日


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